第51章 選んだ果てに
「条件?」
言われたことをそのまま口にすると、今までなんだかんだ許容してくれたコハクが、こればかりは譲れないと頷く。
しかし、逆に言えば、条件さえ飲めばコハクはモモの要望を聞いてくれるということ。
「いいわ、聞かせて。」
条件を聞かないことには、なにも始まらない。
「ひとつは、ペンギンたちの方へはオレが行くこと。」
「……。」
陽動作戦が始まった今、敵はペンギンたちの方へ集中する。
当然、そこへ向かうとなると、多大な危険がつきまとう。
その役目を、コハクが担うというのだ。
本当なら、二手に分かれるのならば、モモがそちらに行くつもりでいた。
だが、コハクはそれを許さない。
「実際、オレが行った方が成功率も高いだろ。母さんじゃ、あいつらのところにたどり着けもしないよ。」
反対したい。
けれど、ここで言い争っている時間はなかった。
それになにより、コハクの言うことはもっともだ。
「わかったわ。その代わり、ヒスイを連れて行くのはあなたよ。」
コハクのことだ、きっとヒスイをモモと一緒に行かせようとしていただろう。
先に言っておかないと、どんどん条件を追加されてしまう。
「……チッ、わかったよ。」
ひとつ目の条件は、お互い妥協することによって承諾した。
「それで、2つ目の条件は?」
条件は2つ。
あとひとつ残っている。
いったいどんな無理難題を言われるのだろうか。
ごくりと唾を飲みながら待ち構えていると、コハクが僅かに下を向く。
「2つ目の条件は……。」
様々な条件を予想した。
しかし、コハクが口にしたことは、そのどれにも当てはまらない。
「無事に戻ったら、オレの父さんの名を……本当の父さんが誰かを教えてくれ。」
「え……?」
てっきり、モモの行動を制限することだと思っていたのに。
どうして今さら、そんなことを……。