第2章 解かれた封印
ザブンッ!
海水の冷たさに肺から空気が出そうになった。
船の尖った木片がモモの肌を裂いたが、冷たさに麻痺したのか痛みは感じなかった。
水中に放り出される感覚に、自分が上手く穴を抜けられたのだとわかった。
けれど目を開けて見た世界は、真っ暗な闇の海。
月明かりもない夜の海は、どっちが上でどっちが下かもわからない。
(落ち着け、落ち着くのよ!)
ドォン!
水中でも、大砲の音が痺れる程に聞こえた。
爆発の火が、振動が、モモに海面を教えてくれる。
無我夢中で縛られた足を動かした。
水中を激しく蹴り、海面を目指す。
途中、何度も漂流物に身体をぶつけたが、そんなことに負けじとひたすらもがいた。
息が苦しい。
酸素が回らず、激しく頭痛がする。
(もう、少し…。)
チカチカする目を必死に凝らした。
徐々に目の前が暗く沈んでいく。
意識が遠のいているのだ。
(諦める…もん、か…。)
薄れゆく意識の中、砲弾がモモのすぐ近くに着水し、放たれた衝撃に身体が浮くのを感じていた。
「船長~!こっちはあらかた片付きましたぜ!」
「ああ…。」
ハートの海賊団、船長のトラファルガー・ローと戦闘員のシャチは海軍の船に乗り移り海兵を蹴散らしていた。
「ベポはどうした?」
「アイアイ!キャプテン、ここにいるよ~!」
ローの呼びかけに船内からド派手なオレンジ色のツナギを着た白熊が顔を出す。
「遅いぞ!目的の物はまだ見つからねェのか。」
「ごめんよ、キャプテン。ちゃんと見つけたから。」
ベポの手にはたった今盗み出したエターナルポース。
「…よし、撤退だ。」
もうこれ以上、海軍の船になど用はない。
こらだけ暴れれば沈没は時間の問題だろうが…。
「アイサー!」
ベポとシャチは、ローに続いて自分たちの船に乗り込む。