第2章 解かれた封印
「ペンギン、船を出せ!」
船に戻ったローは、待機していたペンギンに指示を出す。
「了解~!じゃ、出航と行きますか。」
「あ、待って待って!」
碇を上げるペンギンをベポが止めた。
「どうした?」
「見て、あそこ。誰かいるよ。」
ベポが指差す方向には、海面に浮かぶ大きな木片にかろうじて引っかかった人の姿。
「船から落ちた海兵だろ…。ほっとけ。」
「違うよキャプテン、女の子だ!」
言われて目を凝らすと、細い肢体に漂う長い髪は女性のものだ。
「可哀想だよ、助けてあげよう!」
放っておけ、と言ってもこのクマは今にも海に飛び込みそうだ。
「チッ…。仕方ねェな…。」
ローは傍らにあったリンゴを手に取った。
“ROOM”
ブゥーンと彼女を含む周囲にドーム状のサークルが張られた。
“シャンブルズ”
パッと彼女が消え、代わりにリンゴがポチャリと海に落ちた。
ドサリ
ローの手元にあったリンゴの代わりに、今にも海に沈みそうだった彼女が船に現れる。
「…!」
自分が助け出した女の姿にローは目を剥いた。
「うわー、血だらけじゃねぇか。」
「それになんで手足縛られてんだ?」
「…かわいそう。」
ローが感じたことと同じことを、仲間たちは次々と口にした。
「こんな女の子が、なんだって海軍の船に捕まってんだ?」
シャチがナイフで手足のロープを切ってやる。
動き回ったせいか、痛々しいロープの痕がくっきりと残ってしまっている。
「…ベポ。」
「アイ、キャプテン。」
「その女を医務室に運べ。」
「アイアイ!」
ベポは嬉しそうに彼女を抱え上げた。
「別に、一度助けちまった命をそんな状態にしとくのは、俺の医者としてのプライドが許さねェだけだ。」
この船に乗る者なら自分たちの船長は、『死の外科医』なんて言われているが、本当は優しい男なのだと知っていた。