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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第50章 自由のために




気づいたら、モモは見知らぬ地に立っていた。

自然豊かな村。
どこにでもありそうな田舎の風景だが、なぜだかとても懐かしい。

ふと視線を落とすと、モモの目の前に少女がひとり立っていた。
年齢はコハクと同じくらいか。

どうしてこんな幼い少女がひとりでいるのか。

モモに背を向けたまま、少女は身じろぎもせずに地面を眺めている。

(なにを見ているんだろう?)

何気なく少女の視線を追ってみると、その先にある光景に息が止まりそうになった。

(――ッ!)

補装もされていない剥き出しの大地には、幾人もの人が倒れ伏している。

彼らが寝ているわけではないことは、一目でわかった。

ある者は目や耳から血を流し、またある者は胸を掻きむしって壮絶な表情をしている。

その誰もが、すでに事切れていた。

死体が溢れ、地獄のような地に、少女ひとりが立っている。

(どうして……ッ)

今すぐ少女を抱きしめてやりたいが、モモの足は動かず、手を伸ばすことも叶わない。

自由の利かない身体をもどかしく思う。

そして、息絶えた人たちにもう一度視線を走らせると、違和感を覚えた。

(海兵と、女の人……?)

地に伏しているのは、数人の女性と、多くの海兵たち。

なぜ女性と海兵が亡くなっているのか。
疑問に思っていると、ずっと動かずにいた少女が顔を上げた。


『…――!』

誰かが少女を呼んだのだ。

現れたのは、少女よりいくつか年上の少年。

少年は、モモと同じように、村の様子に愕然としながら、少女に詰め寄った。

『これは……どういうことだ。なにがあったんだ!』

少年に肩を揺すぶられ、少女はようやく口を開く。

『海兵さんが…村を襲いにきたの……。』

死した海兵は村を守ろうとしたのではなく、襲撃した側だった。
その事実に、モモも少年も驚く。

『男の人は、みんな殺されちゃった。おとうさんも……。』

淡々と打ち明ける少女の言葉に、この場に男性がいない理由を知る。

『そしたらね、みんなが怒って、唄ったの……。わたしの知らない、怖い歌を。』

怖い歌?

(待って……。)

この話を、モモは知っている。

襲われた村、殺された男衆。
そして、唄った女性たち。

これは、この光景は……。



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