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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第50章 自由のために




「ぐ……ッ」

瓦礫を押しのけ、吹き飛ばされた副官が刀を杖にして、よろりと立ち上がる。

そんな彼に向かって、ローは静かに問い掛けた。

「俺の狙いは、お前の命じゃねェ。なにが目的か、わかるか?」

「……。」

唇の端から血を流し、憎々しげな視線がローを貫く。

問い掛けの答えを、彼はわかっているようだ。

「お前らには、俺の女が世話になったようだが……その礼をしねェとな。」

あえて刃を向けず、拳を握って副官の頬に一発打ち込んだ。

「ぐぉ……ッ」

まともに食らった副官が、再び床を転がった。

「出せ、アイツから奪った爪を。」

この男の懐に、モモの身体の一部があると思うだけで吐き気がする。

「トラファルガー・ロー…。貴様は知らないだけだ。セイレーンという人種が、いかに危険であるかを。」

頬を腫らし、体勢を整えた副官が刃を振るう。

重い一撃を受け止め、キィン…と鉄がぶつかる音が響く。

「セイレーンは危険な化け物だ。我々が…管理する……!」

海軍秘伝の体術を駆使し、目にも止まらぬスピードで副官が動く。

しかし、ローは彼の動きを追いもせず、たった今言われたことを反芻していた。

(管理、だと……?)

モモを奪われた島で、サカズキが言った言葉を忘れていない。


『お前のところにおるセイレーンは、母体にしよるに決まっとるじゃろ。数が揃わにゃァ、兵器にならん。』


あの男は言ったのだ。
多くのセイレーンを作るために、モモを母体に……無理やり繁殖させる。

そう言ったのだ。

(それを、管理だと?)

モモの意思を無視し、まるで実験用のマウスのように彼女を使うことが、彼らの言う管理。

あの日の怒りが再び燃え盛り、なるべく目立たないようにするという作戦も忘れ、血管がぶち切れる。

「死ね、トラファルガー・ロー!!」

スピードを増し、光速で動く副官を、ぎろりと睨みつけた。

「死ぬのは、お前らだ……!」



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