第50章 自由のために
副官の居場所をつきとめたローは、先ほどの海兵が言っていたとおり、基地の2階へと向かった。
予想に反して、海兵があっさり情報を漏らしたことだけが引っ掛かるが、もし嘘だとしても、それはそれで構わない。
多くの兵が備蓄倉庫へ陽動されているうちに、なんとしても目的を達成したい。
たった今得た情報が嘘ならば、副官が出てくるまで暴れ尽くすのみ。
しかし、階段を駆け上ったところで、そんな心配は杞憂であったことを悟る。
「……。」
2階の廊下に出た途端、凄まじい闘気がびしびしと身体に突き刺さった。
間違いない、この先にサカズキの片腕がいる。
それも、彼はローの存在にとっくに気づいていたようだ。
それを証明するように、踵を鳴らして、足音が近づいてくる。
カツン、カツン……。
現れたのは、長身の男。
すらりと刀を鞘から抜き、風もないのに正義のマントがはためいた。
「お前が、赤犬の副官か?」
胸中では間違いなくそうだろうと思いながらも、問いかける。
「トラファルガー・ロー。元帥を悩ませる頭痛の種が、そっちからやってきてくれるとはありがたい。」
刃こぼれひとつない刀が、ギラリと輝いた。
「人の質問を無視するとは、礼儀のなっちゃいねェ野郎だ。」
大太刀を抜き、無造作に鞘を投げ捨てる。
それと同時に、刃と刃がぶつかり合って、辺りに覇気の波がうねる。
びりびりと空気が振動し、鍔迫り合った。
(なるほど、強い……。)
元帥補佐官の肩書きは飾りじゃない。
数回の迫り合いで、相手の実力を知る。
どうやら、少しナメすぎていたらしい。
副官の実力は、スモーカーやヴェルゴ、そのくらいの技量だと思っていたが、斬撃から伝わる覇気の強さは、そうとうなもの。
だが……。
“アンピュテート”
空振りしたはずの太刀筋が壁を、支柱を、ありとあらゆるものを切断し、副官目掛けて飛んでいく。
「──ッ!」
覇気を纏わせた刀で衝撃を受け止めるが、踏ん張ることができずに、副官の身体が吹っ飛ぶ。
スモーカーやヴェルゴよりかは強い。
しかし、ドフラミンゴに比べれば、まだまだ弱い。
それだけだ。