第50章 自由のために
近づいてきたのは、3人の海兵。
足並みを揃えながら、シャチたちが起こした爆発について語っている。
「備蓄倉庫が爆発したって? 爆発物なんかないのに、なんでまた。」
「さあなァ。でも、上は襲撃の可能性も視野に入れてるみたいだぜ。」
「襲撃? こんな辺鄙な基地を襲うなんて、ありえるか? もしいたら、バカなヤツだぜ。今ここには、あの元帥補佐官様がいらっしゃるのに。」
ひとりの海兵が副官のことを口にし、他の2人も同意するように笑った。
そんな、次の瞬間……。
“ROOM”
薄い膜がピンと張り、海兵たちが違和感を抱く前に、斬撃が飛ぶ。
「……?」
あれ、と思った時にはもう遅い。
視界がぐるりと回転し、ごろごろと床を転がる。
「な……ッ!?」
なにが起こったかもわからず、とりあえず体勢を整えようとしても、腕と脚の感覚がない。
壁にぶつかって回転が止まると、目に飛び込んできたのはバラバラになった四肢と胴体。
目を覆いたくなるような惨状。
しかし、血の海になってもおかしくないはずなのに、切り離された身体からは一滴の血も流れていなかった。
助けを呼ぼうと息を吸い込んだら、口を思いっきり踏みつけられた。
「……騒ぐな。」
「むぐ……ッ」
騒ぎたくとも、靴裏で口を塞がれているから声が出ない。
恐る恐る視線を上げてみると、そこには見知った人物が。
直接会ったことはない。
しかし、軍の人間ならば、この男を知らぬ者はいない。
“死の外科医”トラファルガー・ロー。
少し前にドフラミンゴを倒した彼が、なぜここに?
わけもわからず仲間たちの様子を窺うと、自分の意外の海兵はさらに切り刻まれ、騒ぐどころか口も利ける状態ではない。
こんな有り様では、覇気を使うこともままならず、せめてもの矜持で、必死にローを睨んだ。
「そう睨むな、お前に用はない。」
なら、誰に?
心の声が届いたのか、彼は意外な人物の名を口にする。
「ここに、サカズキの副官がいるな? どこにいる。」