第50章 自由のために
基地に到着したローは、基地全体を覆うほどのサークルを展開させた。
“ROOM”
サークルの範囲を広げれば広げるほど、体力の消費が著しいが、こればかりはしかたがない。
“スキャン”
続いて、基地の内部を探る。
瞬間移動したはいいけど、敵のど真ん中でした…というバカなマネはしたくない。
ふと、同盟中であるルフィの顔が脳裏に浮かんだ。
ドレスローザでドフラミンゴと対峙している最中、ルフィときたら、海楼石製の手錠で身動きの取れないローを担ぎ、あろうことか敵軍のど真ん中に飛び降りた。
あの時ほど、彼に殺意を覚えたことはない。
そんなルフィは、今頃どこでなにをしているのだろうか。
(こんな時に、麦わら屋のことを思い出すとは、俺もずいぶん落ちぶれたもんだ。)
後先考えない彼ならば、下手な小細工などせずに、正面から乗り込んでいくのだろう。
そう考えると、肩の力が抜けてくる。
(モモの爪の欠片も、髪の毛一本だろうがヤツらにくれてやるものか。)
“シャンブルズ”
くるりと手を回すと、次の瞬間には海軍基地の中の景色に切り替わっていた。
ローが侵入した場所は、基地のリネン室。
真新しいシーツやタオル、そして海兵の制服までも置かれている。
この制服を着て移動すれば、多少は目立たずに済むのだろうが、いくら変装とはいえ、こんな趣味の悪い服を纏いたくはない。
変装するなら、サングラスと付け髭ぐらいが限度。
そんなどうでもいいこだわりを披露した時、大地を揺るがすような爆音が響き渡った。
ドォォン…ッ!
衝撃が大きすぎて、基地全体が地震のような揺れに襲われる。
「なッ、なんだ!?」
「爆発……!?」
リネン室の外から海兵たちの戸惑う声が聞こえてくる。
それからしばらくして、バタバタと足音が騒がしくなってきた。
「緊急事態、緊急事態! 備蓄倉庫が爆破した!」
「ば、爆破だと!? 原因は!?」
「原因は不明です! 現在調査中で…──」
「バカもん! 動ける者を総動員して、すぐに現場に向かわんか!」
責任者と思われる海兵の叱責が飛び、海兵たちは「はい!」とすぐに出て行った。
謎の爆発。
この基地の中で、ローだけが原因を知っている。
陽動作戦が始まったのだ。