第12章 デート
モモの髪から綺麗に水気を拭き取ると、次は乱れが気になってくる。
「オイ、ブラシはねェのか。」
「え、あるけど…。」
小物入れからブラシを取り出した。
「貸せ。」
ローはモモからブラシを受け取ると、丹念に髪をとき始めた。
男性にしては手馴れたその様子に驚く。
「ロー、髪とかすの上手ね。」
「ああ。昔、妹によくしてやったからな。」
「そうなの…。」
悲しい記憶しか聞いたことのなかったローの家族。
幸せだった頃を垣間見た気がして、心がほんわかする。
意外と子供の面倒見とか良かったりするのかも…。
「よし、これくらいでいいだろ。」
整え終えた髪に満足して、ブラシを置いた。
「ありがとう。今度わたしも、ローの髪をやってあげるね。」
「俺はいい…。」
なんでよ、と膨らました頬を片手で潰すと、突き出た唇をそのまま食んだ。
「……ん。」
柔らかく唇を啄み、甘い感触を味わった。
「…ぁ…、ロー…。」
口腔に舌が侵入し、モモの舌と絡み合う。
徐々に身体に熱が灯り始めたとき、ローの手が、太腿をスルリと辿った。
「ちょ…、ちょっと待って…。」
唇を離し、ローの硬い胸を押した。
「…なんだ。」
「その…、髪が乱れちゃうから…。」
せっかくとかしてもらったのに、もったいない。
「そんなの、後でいくらでもやってやる。…だから、抱かせろ。」
火がついたのは、ローも同じ。
今さらおあずけされても、無理な話だ。
「でも、ロー…。」
「うるせェ。少し、黙れ…。」
情熱的な口づけで言葉を封じると、あとは彼女の熱を煽るだけ。
モモの弱いところなら、もう手に取るようにわかってる。
ローの思惑通り、次にモモの口から出たものは、おあずけの言葉ではなく、熱のこもった喘ぎ声だけだった。
結局この後、せっかくローに整えてもらった髪は乱れに乱れ、同じくらいモモも乱れることとなった。