第12章 デート
「……山?」
「ああ。」
未だ紅潮したままのモモの頬を撫でてやりながら、ローは言った。
「明日、山へ行こう」と。
「どうしたの、急に。」
「いや、別に…特に理由はねェが、もうすぐこの島のログも溜まる。お前、土が欲しいんだろ? ここらへんの山は良い腐葉土や石灰が取れるらしいぞ。」
「え…。」
昼間に、土が欲しいと言ったことを覚えてくれていたらしい。
そのために、わざわざ…?
もしかしたら、あの本もそのために読んでくれていたのかもしれない。
「でも、山までなんて大変だし…、別にいいよ?」
自分のワガママに、そこまで付き合わせるのは、ちょっと悪い気がする。
「俺の誘いに乗れねェってのか? 別にお前がついて来なくても、俺ひとりでも行って来るがな。」
そう鼻を鳴らして顔を背ける仕草が、なんだか拗ねているようで、つい可愛く思ってしまった。
「ロー、ごめんなさい。本当は、わたしも一緒に行きたい。連れて行って?」
遠慮はなしにして素直に言えば、彼の機嫌はたちまち直り、満足そうに頷いた。
「最初からそう言え。」
「ただ、ちょっと…、体力の方が心配だけど。」
モモのインドアは折り紙付きだ。
登山など出来るか怪しいところである。
「心配すんな。お前ひとりくらい、片手でだって運べる。」
「頼もしいけど、なるべく頑張るね…。」
自分の体力のなさにも、そろそろ改善するときが来たのかもしれない。
とりあえず、今からでも滋養強壮の薬を飲んでおくかと気合いを入れた。
上手く誤魔化されてくれたようだが、ローが今回、山へ行こうと言い出したのは別の目的がある。
もちろん、土質が良いのも本当だけど、ローには他に探したいものがあるのだ。
本当は、ひとりでだって行けるけど、傍にモモがいた方が、見つかるような気がした。
モモには幸運を呼び寄せる力があると思うから。
絶対に喜ばすと決めたのだ。
そのためには、絶対に見つけてみせる。