第50章 自由のために
「ペンギン、ジャンバール、ちょっと来い。」
陽動作戦に備えて、せかせかと準備が進む中、ローは敢えて2人を呼びつけた。
「なんスか?」
「どうした、船長。」
くいっと手で近くに来いと合図し、彼らを傍に……ベポとシャチから引き離させる。
今からする会話は、ベポたちに聞かれたくない。
「どうしたんスか、なんか大事な話?」
こういう時、付き合いが長いだけあって、ペンギンはよくこちらの言いたいことを察してくれる。
無言で頷くと、途端に2人とも表情が引き締まった。
「わかっていると思うが、今から話す内容は、アイツらには黙っておけ。」
なぜ…? とは聞かれなかった。
長い時間 船で過ごしていれば、自然と互いの性格も知れてくる。
熱い性格のシャチは、感情が先立ってしまい、冷静な判断がつかないことも多々ある。
心優しいベポは、好きになった人にはとことん尽くすタイプ。
ゆえに、時折誰よりも頑固だ。
その点、マイペースなペンギンは、空気が読めないものの、物事を冷静に判断することができ、船長経験のあるジャンバールもそれに然り。
だからこそ、仲間たちにとって、意に添わない命令をする時は、ローは決まってこの2人に指示を出す。
「これから、お前たちは陽動を、俺は基地に潜入してモモのビブルカードを探す。」
それは事前に打ち合わせしたとおりなので、2人とも黙って聞いていた。
「ヘマをするようなことはしねェ。だが、万が一の事態に備えることも重要だろう。」
万が一…。
例えば、ローがサカズキの副官に敗北し、捕らえられたり、潜水している海賊船が見つかり、モモたちが危うくなったり。
「基本的にはお前たちの判断に任せるが、陽動後、もし俺が一時間しても連絡をしない時は……お前らだけで船に戻り、島を脱出しろ。」
作戦では、ビブルカードを入手したら、合流して船に戻る予定だが、予定どおりにいかないのが作戦である。
そうなった時、全滅だけは……モモが危うくなることだけは避けたい。