第50章 自由のために
飲めば20年ほど時間が変化する秘薬。
どんな成分かは知らないが、危険な劇薬であることには変わりない。
うっかりコハクが飲んでしまえば、若返るどころか、受精卵にまで遡ってこの世から消えてしまいそうだ。
「こんなもん、さっさと処分しよ。」
しかし、捨て場所に困る。
不用心にそのへんに捨ててしまえば、収集コレクターの2人がどこからか拾ってきてしまう。
かといって、潜水中では海に流すこともできない。
ついでに言えば、モモに見つかっても大変なことになる。
きっと、「成分を解析したい!」と言い出すに違いないのだ。
それはすごく面倒くさい。
モモに気づかれないように、どうやって処分しようか……。
そんなことを考えていたら、後ろでモモが苦しげに呻いた。
「うぅ、重い……。」
ガラクタの山をゴミ袋に収め、ずるずると引きずっている。
「あ、母さん! 無理するなよ。」
ふらつくモモは、今にも転倒しそうだ。
危険な目に遭わせないよう、ローはモモを置いていったのに、こんなことで怪我をしてしまったら、気まずくて顔を合わせられない。
コハクは秘薬をポケットに突っ込み、急いでモモのあとを追った。
一方、島へと上陸したローたちは、早速海軍の様子を偵察する。
「アイアイ、キャプテン! 東の湾岸に海軍の見張り台があったよ。」
「北の森には、備蓄庫らしいものが建ってたッス。」
盗み出した地図の上に、新たな情報を書き込んでいく。
「よくやった、お前ら。」
部下の手際の良さを褒めながら、作戦を遂行するため、とるべき行動を考える。
ローは基地へと潜入し、他の者たちは海兵たちを誘き出す。
決めなくてはいけないのは、陽動場所だ。
「ここしかねェな。」
ぽんと指差したのは、たった今 発見したばかりの備蓄庫。
「まずは、ここを制圧する。」