第50章 自由のために
片付けられない人というのは、とにかく整理整頓が苦手なものだ。
ちなみに、ハートの海賊団で言えば、シャチとペンギンを指す。
彼らは「男のロマンだ!」などと言って、酒瓶をコレクションをしたり、「いつかは使うから…」と言ってガラクタを捨てられなかったりする。
「この酒瓶は…ラベルが破れてるからいらないな。こっちのルアーは…針が折れてるからいらない。」
シャチとペンギンの言う男のロマンは、残念ながらコハクには理解できない。
なので、哀れなコレクションは次々とゴミ扱いされていく。
「どうせなくなっても、気づかないだろ。」
怒られたら、モモが捨てたと言えばいい。
仲間内では誰もがそうだが、とりわけあの2人はモモに弱い。
キツイことは言えないし、逆に言うことを聞いてしまう。
まるで、そうすることが当たり前だと、身体に染み付いているように。
「コハク、分別は終わった?」
「んー…、もう少し。」
だいたいのメドはついたが、まだ戸棚の中や、その隙間に落ちたものを見ていない。
普通なら、そんなものは無視してもいいのだろうが、誰に似たのかコハクは完璧主義。
やるからには徹底的に掃除したい。
戸棚を漁って、不要なものを適当に外に出す。
ワインのコルクとか、集める意味がわからない。
ついでとばかりに、自分の所持品を整理した。
みんなのものをこれだけ捨てておきながら、自分のエリアが汚かったら格好がつかない。
もともとコハクの所持品は少ないので、荷物の整理はすぐに終わる。
クローゼットを弄くったため、せっかく畳んだ服が崩れた。
舌打ちをしながら畳み直していると、とあるズボンのポケットに、なにかが入っていた。
(あれ、なに入れたんだっけ?)
なんとはなしに手を突っ込むと、なにやら固い感触が。
「あ、これ……。」
出てきたのは、怪しげな小瓶。
「あー…思い出した。これ、サクヤに貰った秘薬だ。」
貰ったというより、押しつけられた薬だが、その効果は恐ろしいものだ。
これを飲んだモモがどうなったかは、記憶に新しい。
(これのせいで、散々な目に遭ったもんな。)
忌まわしき秘薬の存在を、今の今まで忘れていた。