第50章 自由のために
数時間後、潜水艦は島へと到着し、海軍基地がある場所とは正反対の位置へ停泊した。
しかし、あえて沿岸には船をつけない。
断崖絶壁の岩場、それも海底に船を停める。
「船を浮上させないの?」
「ああ。船が見つかれば、戦力を集中させる意味がない。」
守りたいものを置いていく。
それなのに、船を奪われたらすべてが終わりだ。
だから、一番見つかりにくい場所に船を……モモとコハクを隠すことに決めた。
「でも、それならどうやって島に降りるの?」
すでに錨は下ろしてしまっている。
まさか、泳いでいくわけではないだろうし。
そんな心配をしていたら、ローは呆れたようにため息を漏らす。
「お前…、俺の能力を忘れたのか?」
「え? 能力って……あ、そうか!」
ローのオペオペの実の能力。
それは、なにも医療にかかわる力だけではない。
もっとも使い勝手がよく、便利な力は瞬間移動である。
ローのサークル内であれば、どんな場所であっても簡単に潜入できてしまう。
例えば、海底の船から島の中へも。
「一応、お前たち2人にも今回の作戦を説明しておく。」
モモとコハクは船番のため、作戦内容を知らなくてもいいが、仲間である以上、明かしておくのが筋だろう。
「何度も言っていることだが、今回の目的はあくまでもモモのビブルカード。戦闘は極力避けたい。」
優先すべきはビブルカードと、クルーの無事。
そのためには、いかに敵と接触しないかが重要だ。
「基地に潜入するのは、俺ひとりだ。ベポたちには、陽動を頼む。」
騒ぎを起こし、基地から海兵たちを誘導する。
そうすることで、ローは基地からビブルカードを盗みやすくなるのだ。
ある程度したら、戦闘になる前に撤退し、ローと合流して船へ戻る。
そういう作戦。
「ローだけ基地に潜入するなんて、危険じゃないの? せめて、誰かひとりくらい、連れて行ったら?」
「イヤ、隠密行動なら、ひとりの方が動きやすい。」
それに、いざという時のことも考えて……。
しかし、そのことだけは、口にしなかった。