第50章 自由のために
その瞬間は、意外と早くきた。
「キャプテン、島だ! 島が見えるよ!」
望遠鏡を覗くベポが叫び、地図を広げる。
「うん、やっぱりそうだ…。あそこに見えるのは、目的の島だよ!」
自分たちが目指していた、目的の島。
海軍基地がある島だ。
「ようやくか。よし、潜水したまま走行しろ。」
「アイアイサー!」
船は海底を進み、島に接近する。
しかし、到着する前に、ローはクルー全員をリビングに集めた。
「今回の件だが、上陸は俺とベポ、シャチ、ペンギン、ジャンバールがする。モモとコハクは船番で残れ。」
「ちょっと待ってくれよ!」
真っ先に異を唱えたのはコハクだ。
「留守番なんて、嫌だ。オレも行く!」
「わたしもよ。もともとわたしのミスでこうなったんだもの、一緒に行くわ!」
船番。
そう言えば聞こえはいいが、つまりは「安全な場所にいろ」ということ。
そんな指示に、納得できるはずがない。
しかし、モモとコハクの不満を聞いても、ローは意見を変えることはなかった。
すっと手を上げ、2人を黙らせる。
「なら、モモに聞く。俺たちが向かうのは、海軍基地だ。そんな場所でお前になにができる。戦力にならなくてもいいが、自分の身くらいは守れるんだろうな?」
「それは……。」
戦力どころか、運動能力すら怪しい。
モモが上陸するためには、誰かが自分を守らねばならない。
それは、戦力が欠けることを意味する。
つまりは、お荷物だ。
「次に、コハクに聞く。基地にいる海兵どもは、全員が覇気の使い手だ。お前はガキにしては武力もあるが、ついてきたいと言うからには、覇気を習得したんだろうな?」
「く……ッ」
サクヤから譲り受けた妖刀はかなりの業物だ。
日頃の訓練で、刀に振り回されないくらいの技量は得た。
しかし、覇気だけは訓練でどうにかできるものではない。
素質はあると言われたが、習得しなければ海兵に傷ひとつ付けられないだろう。
悔しいことに、この島ではコハクもお荷物となる。