第50章 自由のために
喧騒はしばらく続き、その間モモはリビングから動くことができず、ただ呆然と突っ立っていた。
ガチャ……。
リビングのドアが開き、ハッと我に返る。
「モモ…ッ、お前…ここにいたのか。」
中に入ってきたローが、こちらを見て驚く。
「ロー! 無事なの……!?」
慌てて駆け寄り、彼の身体に傷がないか確認する。
「あんな連中に、俺たちが遅れをとるわけねェだろう。」
「……やっぱり、海軍の船だったのね。」
「ああ。」
ローの勘は当たっていた。
遠くにぼんやり映っていた船影は、やはり敵で、それも海軍の船。
「大丈夫だ、心配そうな顔をするな。悪いことばかりじゃねェ。有益な情報も手に入った。」
ホラ…と見せられたのは、1枚の島の地図。
「これは……?」
「俺たちが向かっている島の地図だ。ここに描かれているのが、海軍基地だな。」
ローが指差す箇所には、小さな建物の印が。
「運がよかった。事前に地理を知っているのとそうじゃねェのとじゃ、戦況に大きく影響するからな。」
戦況……。
これから待ち受ける、本当の闘い。
ルフィたちの居場所か、モモのビブルカードの行方か。
ライラから得られる情報は、ふたつにひとつ。
そう、ローが選んだのは、モモのビブルカードだ。
あれが敵の手にある限り、この広い海のどこにいたって自由はない。
自由を愛する海賊団は、再び自由を手に入れるため、モモと自分たちの安全を確保するため、あえて危険な道を選んだ。
ずっと海底を進んでいたのは、目的の島…海軍支部がある島に、自分たちが向かっていると知られないため。
「でも、もう知られてしまったの?」
戦闘になったということは、他の船や基地に連絡が入っている可能性が高い。
「さァな、一応、ヤツらの電伝虫は回収したが…知られたかどうかは運しだいだ。」
テーブルの上に、ばらばらと電伝虫が散らばる。
「……これ、掛かってきたら、どうするの?」
「出てみるか?」
「え……ッ!」
「冗談だ。放っておけ。」
珍しく冗談を言ったかと思えば、全然笑えない。
この電伝虫に掛けてくる人は、当然政府側の人間だ。
感情のない2つの目が、じっとモモを見つめている。
その視線が政府そのもののようで、ぞっと背筋が冷えた。