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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第50章 自由のために




和やかな空気が一変したのは、ジャンバールの一声からであった。

「おい、みんな……南西の方角に船影が見えるぞ!」

誰もが南西に視線を走らせ、船上には鋭い緊張感が走る。

「ベポ、酸素濃度は?」

「……まだ、あまり補填できてないよ。どうする? 一度潜って場所を変えようか。」

「……イヤ。」

こちらから船影が見えるということは、向こうからも同じように見えているはず。

ここまで海の底を進んできたのは、敵船に発見されたくなかったからだ。

発見したばかりの船影は、旗のマークまでは確認できない。
もしかしたら、ただの商船や貨物船の可能性もある。

だけど……。

「ありゃァ、敵船だ。俺の勘がそういっている。」

「……ってことは?」

全員の視線が集まる中、ローはニヤリと口角を上げた。

「野郎ども、戦闘だ。」

「「アイアイサー!!」」

威勢のいい返事が響き渡り、それと同時に全員が配置につく。

ただひとり、モモだけがデッキにぽつんと立っている。

「お前は船内に入れ。」

「でも、わたし……。」

「心配しなくても、まだ酸素は残ってる。窒息なんかしねェよ。」

違う、そんな心配はまったくしていない。

「わたしもなにか手伝いたいの!」

自分だけ安全なところに身を隠していたくはない。
しかし、そんなモモの気持ちを無視するように、ローは冷たく言い放つ。

「お前にできることはねェ。」

「でも、なにか……!」

「その細腕で大砲が撃てるのか? それとも、刀を持って斬りつけられるのか?」

「……ッ」

どちらもモモには無理なこと。
モモにできるのは、せいぜい怪我の手当てくらい。

「誰もお前を責めやしない。人には、向き不向きってもんがあるんだよ。お前は船の中にいてくれ。……頼むから。」

最後の一言だけ、やけに熱を感じた。
そこまで言われてしまえば、モモに反論できる余地はない。

「わか…った……。」

結局はなにもすることができず、たったひとりで船内に戻った。



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