第50章 自由のために
そんな楽しい食事を終えた頃、なんだか少し息苦しさを感じてきた。
「オイ…ベポ、そろそろ酸素濃度が薄くなってきた。」
「アイアイ、キャプテン。じゃあ、このあたりで一度 船を浮上させるよ!」
潜水艦は、空気の入れ替えをしないと、酸素が薄くなってクルーの命にかかわる。
そのため、この船にはいたるところに酸素濃度計が設置されていた。
「お、浮上するんッスね。じゃあ俺は、操縦室に行ってきます。」
「オレも行く。」
船の操縦は、クルーであれば誰でもできるように教わっている。
今日はペンギンとコハクがそれを引き受けた。
ちなみにモモはといえば、操縦方法は教えてもらったけど、未だに一度も実践したことはない。
やろうとすると、みんなが必死の形相で止めるのだ。
失礼な話である。
「モモ、浮上したら日光を浴びておけよ。身体に陽の光を取り入れなさすぎると、不調の原因になるからな。」
「うん、わかってる。」
1日にたった一度の海面浮上は、貴重な日光浴の場でもある。
そうとはわかっているが、凍てつく海風が堪えるので、モモにとってはなかなか辛い。
ジリリリ…と浮上を知らせるベルが鳴り、黄色い潜水艦はゆっくりと上昇していく。
「外、どうなってるのかな。」
昨日はまだ冬の気候に入りきっていなかったので、海上に変化は見られなかった。
しかし、あれから航路は進み、気温もぐっと下がったから、それなりに景色も変わっているだろう。
「アイアイ、この寒さだもんね。海面が凍ってないといいけど。」
「凍ってたら、どうなるの?」
「ある程度の厚さなら、突き破って浮上できるよ。でも、氷山クラスの厚さは無理かなぁ。」
無理だったら、どうなるんだろう。
まさかとは思うが、窒息死……。
ぞっとして顔色を青くするが、そんなモモをジャンバールが苦笑する。
「心配することはない、俺たちには船長がいるからな。まったく、悪魔の実とは便利なものだ。」
ああ、そうか。
ローがいれば船内からでも氷を割れる。
新世界と呼ばれるこの海域では、常識が通用しない。
クルーの中に、なんらかの能力者がいなければ、ただ航海することも困難になる。
本当はモモも、その“なんらかの能力者”の一員のはずなのに。