第50章 自由のために
冷え込んだ空気は、腰痛に堪える。
今日は1日ベッドにいろと言うローを無視し、モモはリビングに上がった。
ガチャリとドアを開けたら、お米の炊けるいい匂い。
「あ、モモ! 具合が悪いって聞いたけど、大丈夫?」
ベポが心配してくれたが、なるほど、具合が悪いことになっているらしい。
「ありがとう、大丈夫よ。」
まさかその情報を流した本人が原因なのだとは言えず、曖昧に微笑んだ。
「ちょうど今、朝メシ届けに行こうとしてたんだぜ。ここで食う?」
「わ、シャチのおにぎりはひさしぶりだね。うん、ここで食べる。」
モモが不在の間、料理を担当していたのはシャチだ。
彼はこう見えて、手先が器用。
かつて、彼に料理を教えたのはモモなのだが、その事実を知っているのは自分とヒスイだけ。
そのヒスイはというと、寒さは苦手らしく、熱を発するヒートダイヤルの前で丸くなっている。
……猫みたい。
「ほらよ。」
「ありがとう。いただきます!」
少し塩気の強いおにぎりをむぐむぐと口に含み、堪能する。
「うん、美味しい。」
「ありがとよ。そうやって褒めてくれるの、モモだけだ。」
「?」
ちらりと食事を終えた他の面々を眺めると、それぞれから文句が出てくる。
「握りすぎて固いッス。」
「丸いおにぎりはおにぎりと認めない。」
「具が鮭じゃない。」
「塩気が強いな。」
……なんて辛口評価なのだろう。
「うるせー! っていうかベポ、具材で評価下げるのやめろ!」
「アイアイ! おにぎりの具は、鮭かツナかタラコだって決まってるんだよ。」
……それは初耳だ。
ぎゃいぎゃいとおにぎり論争が始まると、騒ぎを聞きつけたのか、ローもリビングに上がってきた。
「うるせェな……。何事だ。」
「あ、キャプテン、おはよう! ねえ、おにぎりの具は、鮭かツナかタラコだよね?」
「あ? そんなもん、なんだっていいだろうが。」
1番おにぎりにうるさいくせに、そういうこと言っちゃうか。
(……今度、梅干し入れてみようかな。)
大きめのおにぎりを飲み込みながら、そんなことを考える。
ハートの海賊団は、おにぎり愛が強い。