第50章 自由のために
しだいに律動は速まり、先ほどの行為が嘘のように、激しさを増す。
「あ…ぅッ、ん…ぁ……ッ」
にちゃにちゃと粘り気のある水音を響かせ、結合部からは泡立った粘液が滴り落ちる。
ベッドのシーツに零れ、汚してしまうことも厭わず、ローはめちゃくちゃに腰を振った。
噛みつくような口づけが落ち、荒々しく身体を貪られる。
熱く滾る楔の切っ先が、ぐちゃぐちゃになった胎内を鋭く貫き、くすぶっていた火種は、あっという間に大きな炎に姿を変える。
「うぁ…ッ、あ…んん……ッ」
快感の炎に身を焦がしながら、モモは必死にローの情熱を受け止めた。
冬の気候に入った。
しばらくは、この寒さが続くだろう。
気候の安定…すなわちそれは、目的地が近いことを表していた。
(わたしたちの、目的地。)
不安がないと言えば、嘘になる。
セイレーンの能力は戻っていないし、戻るかどうかも不明確なまま。
でも、ローが選んだ道ならば、彼を信じて突き進むだけ。
大丈夫。
辛くても、険しくても、今までだってそういう道を選んできた。
だから、きっと、今回も──。
「……あぁッ!」
ずん、とひときわ重く貫かれ、堪えきれずに甲高く鳴いた。
「……今、なにを考えている?」
前髪を掻き分けられ、じっと瞳を覗かれる。
「やってる時に、他のことを考えられるとは……ずいぶん余裕じゃねェか。」
「ちが…ッ、ちゃんと……ッ」
余裕なんかない。
それなのに、ローはモモの両脚を抱え上げ、己の肩に掛けると、腰を掴んでずるりと屹立を抜く。
前の行為で放った体液が、ごぽりと蜜口から溢れ出す。
「あ……ッ」
自分の中から出ていく感触に、ぞわぞわと背筋が震えた。
しかし、それを打ち消すかの如く、粘液に塗れた切っ先があてがわれ、ひと息に最奥まで穿たれる。
「あぁぁ……ッ」
蜜と粘液とで潤滑になった胎内は、ローの激しい動きも易々と包み込み、妖しく伸縮しては彼を締めつける。
「余裕があって、なによりだ……。それならまだ、いけそうだな?」
「やぁッ、も……むりぃ……ッ」
しかし、そんな泣き言を聞いてはくれない。
激しく濃厚な行為は、夜明け前、モモが意識を手放すまで続いた。