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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第50章 自由のために




「だって、急に冷え出したんだもの。ローは寒くないの?」

「寒い?」

案の定、言われて初めて気がついたらしい。
そういえば涼しくなったな…なんて呟いている。
涼しいどころじゃないんですけど。

「さっきベポに聞いたら、冬の気候に入ったんですって。」

「ああ…、冬島が近いのか。」

近くに島があると、その近海の気候は安定してくる。
しばらくは、ずっとこの寒さが続くだろう。

「わたし、あまり厚手の服って持ってなくて。」

「なんでそれを、商船にいた時に言わねェ。」

確かに。
あの時それに気がついていれば、いくらでも冬服を揃えられただろう。

「まったく、お前はいつもいつも……。」

呆れたため息を零され、湿った髪の水気を丁寧に拭われる。

「酒でも飲みゃァ、体温も上がるだろうが……お前に酒は飲ませられねェな。」

とんでもなく酒に弱くて、その上 酒癖も悪い。
へろへろに酔っ払って甘えてくるモモは可愛いけど、手に負えなくなるので、酒は与えないようにしている。

「しかたねェ。」

なにがしかたないのか…と聞こうとした時、タオルがばさりと頭に落とされ、視界を遮られる。
同時に、身体が宙に浮いた。

「きゃ……ッ」

「オイ、暴れんな。」

脇の下に手を入れられたと思ったら、くるりと反転し、あっという間に担ぎ上げられた。

身長の高いローに抱えられると、なかなか怖い。
落とされないとはわかっていても、がしりと首筋にしがみついてしまう。

すたすたと部屋の中を歩いたローは、モモの身体をベッドの上に転がす。

「わ……ッ」

キングサイズのベッドにぽいっと投げられ、ぼすんと身が沈んだと思ったら、一緒にローまで寝転ぶ。

そしてモモの腰を抱くと、そのまま己の身体に引き寄せる。

ぴったりとくっつけば、剥き出しの肌から体温が伝わり、身体の芯が温まってくる。

「しばらく、そこにいろ。」

掛布を被され、ぽんぽんの背中を叩かれると、まるで子猫になったような気がしてきた。



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