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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第50章 自由のために




部屋まで戻ってくると、敷かれた絨毯のおかげで床の冷たさからは逃れられたが、暖房器具があるわけでもないので、寒いことには変わりない。

「ううー…。」

心なしか、先ほどよりもさらに冷え込んできた気がする。

クローゼットを開け、なにか羽織るものを探すが、そもそもモモの衣服は数が少ない。
しかも、春島から持ってきたものだから、薄手の服ばかりだ。

それでも無いよりかはマシなので、七分袖のカーデガンを羽織る。

手のひらで両腕をさすっていると、開け放たれたドアの奥から、ローが呼ぶ声がした。


「モモ、戻ったのか?」

ローとモモの部屋を繋ぐ続きのドアは、恋人となったあの日から、閉まることはなくなった。

部屋に戻ったのならこちらへ来い…。
そう言われた気がして、のそのそと部屋を移動する。

部屋のソファーに座り、ローは本を読んでいた。

あいかわらず素肌にパーカー。
寒いという感覚はあるのだろうか。

「……戻ったわ。」

「ああ。」

声を掛けると、本から目を離さないまま、ぽんぽんと自分の横を叩き、隣に座れと促してくる。

本棚から適当な本を1冊とり、ローの隣に腰を下ろした。

他のみんながいる前では、あれほど独占欲を剥き出しにするくせに、ふたりきりでいると、それが嘘のように穏やかな時間が流れる。

こういう穏やかな空気は、居心地がよくて好きだ。

「……くしゅんッ」

やはり薄い生地では身体を暖められなかったようで、冷えからくしゃみが出てしまう。

ちらりとローが視線を上げ、鼻を擦るモモを見たとたん、渋面を作って本を閉じる。

「……オイ、髪が濡れてる。そんなんだから、冷えるんだろうが。」

しかたがないじゃないか。
長い髪を乾かすには、時間が掛かる。

「ホラ、じっとしていろ。」

戸棚からタオルを持ってきたローが、モモの頭にそれを被せ、がしがしと水分を拭き取る。

「わわ……ッ」

驚いて身を捩れば、濡れた髪がローの肌に触れた。

その冷たさに彼は眉をひそめ、こんな質問をする。

「お前、水浴びでもしてきたのか?」

「え……?」

「でなきゃ、どうしてこんなに冷えている。」

まさかとは思うが、この寒さに気づいていない?
なるほど、化け物級の肉体を持つ彼らは、気温の変化に疎いらしい。



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