第50章 自由のために
大切な人がいなくなる。
それは、何度経験しても慣れることはない。
モモにとっては、両親であり、エースであり、6年前のローを。
そしてローにとっては、家族であり、コラソンであり、モモを。
同じくらい、大切な人を失ってきた2人だが、決定的に違うのは、ローはすべてを目の前で奪われたということ。
その誰もが、ローにとっては己の唯一であった。
人間、そう何度も絶望に耐えられるわけではない。
一度は失いかけた最愛の人。
運良く取り戻せたけど、またいつ、脅威が訪れるとも知れない。
なぜなら、自分たちが選んだのは、そういう道だ。
自ら選び、自ら進む。
けれどどうしても、味わってしまった恐怖は簡単に消せるものではない。
だからローは、モモの存在を確かめたくて、傍から離そうとしないのだ。
こんなに大きな身体で、そんなに凶悪な顔つきで、子供のように独占欲を剥き出しにしてくる彼を可愛いとは思う。
でも……。
(可愛いけど、実際行動に移されると、すっごく困る!!)
これが子供なら、抱きしめて一緒に眠ってあげればいいのだが、なにせ相手は凶暴な大人。
抱きしめて眠るだけで、終わるはずもない。
ちょっと船内を歩き回れば、先ほどのように探されて、自室に戻ろうとすれば不機嫌さを増す。
そんな態度を常にするから、みんなの視線が恥ずかしい。
そんなやり取りを、やけに懐かしく感じる。
“恋人”になることが ひさしぶりすぎて忘れていたが、そういえば、ローは愛情の重たい人だった。
独占欲も執着心も人一倍強い。
いかにもクールそうな顔と性格なくせに、そのギャップはどこから来るのか。
しかし、そういうモモも、失う恐怖を知っているから、強く拒否もできない。
恋人を甘やかしているのは、モモがローか、はたしてどちらなのだろう。