第12章 デート
「そういえば、前にメルが言ってたけど、この島って宝石の産地なんだって。だから良質な石が多いって言ってたけど、そうなの?」
「…確かに質はいいな。」
モモにはどれも綺麗な石に見えるが、ローにはそれの良し悪しがわかるらしい。
それならば、モモに助言できることはないだろう。
(それにしても、さっきから女性もののアクセサリーばっかり見ているけど…。)
店内にはきちんと男性用や武器を飾る装飾品のコーナーがあるのに、ローはそちらを見向きもしない。
「オイ…、どれかいいと思ったやつはないのか。」
「え…?」
それまで傍観に徹していたため、急に意見を求められて驚く。
「ごめんなさい、わたし、宝石の良し悪しはわからなくて…。」
たいした助言はできそうにない。
「あ? デザインとか、そういうのでいいだろうが。」
デザイン…?
うーん、と首を捻らせる。
「ローは背も高くて格好いいから、なんでも似合うと思うけど。」
結局、素直に思ったことを口にした。
「お前…、なんか勘違いしてんな。」
当然、ローはモモになにか買ってあげたくて街に来たわけだが。
メルディアの言葉はそれなりに効いた。
ローだって、モモを喜ばせたい。
「お前、なにか欲しいものはねェのか?」
「欲しいもの?」
モモにとっては唐突な質問に、首を捻らせる。
「そうね…、土とか…。」
「…は?」
彼女は自分の想像とは大きくかけ離れた答えを返してきた。
「土よ、できれば腐葉土とか。良い土があれば、船で薬草を育てるのに役立つでしょう?」
モモは先ほど宝石を見ていたときより、何倍もキラキラした瞳でローに語った。
(なるほどな…、メルディアが心配するわけだ。)
モモは今この場で、ローが自分にプレゼントをと考えていることを、露ほども想像していない。
それが悔しくて、モモが絶対に喜ぶものを贈ると決めた。