第12章 デート
「…行っちゃったね。」
「寂しいか?」
「少しだけ…。」
嘘。本当はすっごく寂しい。
モモの心を知ってか知らずか、ローはモモの肩をそっと抱き寄せた。
「そろそろ船に戻ろうか。」
「ああ。……いや。」
ローはなにかを考えるように俯く。
「ロー?」
「少し街に寄って行くぞ。」
「うん…。」
なにか用事でもあったのだろうか。
自分は特になにがあるわけでもないので、ローに付き合うのは構わない。
行くぞ、と行って街に足を進めるローに、小走りでついて行った。
「ねえ、ロー。なんの用事があるの?」
街についたはいいが、先ほどから当てもなく歩くローに、耐えかねて聞いてしまった。
「用事は…特にねェが、悪いか?」
「そうなの?」
じゃあ、なぜ街に…?
と考えてモモはハッと気づく。
これは…、まさか世にいう「ウィンドウショッピング」ってやつか。
小規模な村にしか住んだことのないモモにはわからなかったが、都会の人たちは買う気もないのに、商品を見て楽しむらしい。
(しまった、恥ずかしい…。田舎者感、丸出しじゃない。)
ローの隣に立つのだ。
いつまでも田舎娘じゃいられない。
こうしてモモはローの思惑と大きくズレた気合いを入れた。
しばらく2人は街をぶらぶらと歩いたが、ローがある店の前で足を止めた。
宝石店だ。
店頭には美しくカットされた宝石と、アクセサリーが飾られている。
「…入るぞ。」
「え、うん…。」
正直、ローとは似つかわしくない店に入ることに少々驚いた。
「いらっしゃいませ! ご覧になりたい商品があれば、お気軽に仰ってくださいね。」
店内に入ると、店員が気さくに声を掛けてくれた。
それにモモが笑顔で応じながら、ローの裾を引っ張る。
「なにか欲しいものがあるの?」
ローがこういうものが好きとは思わなかった。
考えてみればモモは彼の趣向をあまり知らない。
ならば、これを気にもっと知っておきたいと思った。
「いや…。」
珍しく彼は迷った様子だ。
確かにこれだけ商品があれば、迷ってしまうのもわかる。