第50章 自由のために
「やっぱ、裸の男がうろうろしてると、気分が悪いもんッスか?」
「気分が悪いというか…、ちょっと目のやり場に困るのよ。」
そう言うペンギンは、膝上の下着1枚にいつものお気に入りの帽子という姿。
なぜ帽子なのだ、隠す場所は他にもたくさんあるだろう。
ちなみに、頭頂部が寂しいわけではない。
コハク以外、誰の姿も直視できず、視線をさまよわせていると、他意もなくペンギンがぶっ込んだ。
「へー、じゃあ、船長といると大変ッスね。」
「「……!!」」
言ってはならない禁止ワードをあっさりと口にされ、モモはもちろん、仲間たちも固まった。
「た、大変って、なにが……!?」
流せばいいのに、動揺のあまりそんなことを口にしてしまう。
「なにって…、船長 脱ぎたがりじゃないッスか?」
脱ぎたがり!
まるで、どこぞの変態みたいだ。
「ま、まァな。でもあれは、ファッションだろ。」
気を利かしたシャチが、どうにか正しい方向に導く。
そうそう、ローってば、素肌に前開きのパーカーとか、普通に着こなすから。
しかし、その空気が読めないのが、ペンギンの良いところであり、悪いところ。
「いや、そういうことじゃなくて。ほら、用事があって船長室に行くと、いつも裸に近いじゃないッスか。たぶん、あれって──」
「やめてやめてやめて!」
「わー! わー!」
モモとシャチが同時に叫び、ジャンバールが大きな手のひらでペンギンの口を塞ぐ。
「子供の前でする話ではないだろう。」
そんなジャンバールの苦言に、眉をひそめたのはコハクだ。
「ガキ扱いするなよ。オレだって、子供の作り方くらい知ってる。」
「コハク…!? ど、どこでそんなことを覚えたの!」
「医学書だよ。そんなことも知らないで、医者の見習いができると思ってんの?」
なんて子供らしからぬ子供。
ということは、今の話もしっかり理解できているわけで。
羞恥のあまり、ぶるぶると震えていると、噂の男が姿を現す。
「モモ、こんなところにいたのか。」
自分を探していたであろう船長は、噂に違わず素肌にパーカーを羽織っただけの格好。
「みんな…、お願いだから、服着よう。」
洗濯くらい、いくらでも喜んでするから。