第49章 休息
あれやこれやと勧めてみたが、どの薬にも彼女は食いついてこない。
ここまで反応がないと、あれほどあった自信もどんどん萎んできた。
(やっぱり、わたしが取引をするなんて、無理だったのかな。)
せっかく成立しかけていた取引を、自分のワガママで破談にしたのに、それを挽回することもできない。
「じゃあ、これもダメよね……?」
落ち込みながら手にした小瓶を、ライラが欠伸をしながら眺める。
「なにそれ。」
「惚れ薬なんだけど。」
「……惚れ薬!?」
意外にも彼女は、今までになく反応した。
「なにそれ、本当に惚れさせられるの?」
「えっと…、一種のまやかしみたいなものだけど。」
「まやかしだろうがなんだろうが、惚れさせられるの!?」
「……まあ。」
食いつき具合がちょっと怖い。
ちなみにこの惚れ薬は、昨日買ったサクラ王国の惚れ薬をもとに、モモが改良したものだ。
半分残った薬がもったいなくて、ちょっとした遊び感覚で作ってみた薬。
100万ベリーもしたのだ。
サクラ王国のブランド力は消えてしまうけど、もしかしたら売れるかもしれない…そんな気持ちで持ってきた。
それがまさか、こんなところで役に立つなんて。
「でも、この1本で3日くらいの効果しかないのよ。」
飲ませただけで、永遠に心を手に入れられる。
そんは魔法のような薬は、この世に存在しない。
勘違いして購入されても困るので、そこはきちんと説明しておく。
するとライラは、呆れたように呟いた。
「あんた、取引の才能ないわねぇ。そんなマイナスポイント、言わなくたっていいのに。」
「え、でも…、あとから想像と違うものだったとわかっても大変じゃない?」
「そんなの、取引が成立しちゃえば関係ないじゃない。」
そういうものだろうか。
でもそういえば、この薬は高価なものなのに、購入した薬屋の店主は、なにも説明してくれなかった。
モモは誰かに飲ます気はなかったけど、本当に使うつもりなら、効果の短さを知って後悔するに違いない。
「だけど、薬剤師として、薬の効果を説明せずに渡せないわ。」
取引としては、言わない方が良かったのかもしれない。
けれど、薬剤師ならば、そんなやり方はあり得ないから。