第49章 休息
「ふーん…。いいわ、それと交換しましょ。」
「え……ッ」
薬の説明を聞いたにもかかわらず、ライラは取引に頷いてくれた。
「いいの? 効果は3日しか続かないのよ?」
「いいわ。効果があるなら、それで。」
もう無理だと思っていただけに、ライラが心変わりしたことが信じられない。
「ええっと、じゃあ…交渉成立ってことでいい?」
おそるおそる薬の入った瓶を差し出すと、それを受け取った彼女が「その代わり…」と提案してくる。
「教えられる情報は、ひとつだけよ。」
「ひとつだけ?」
「そう。さっきも言ったとおり、これはウチの機密事項なの。本当なら、ひとつだって教えられないんだから。」
モモたちが知りたい情報は、2つある。
教えてもらてるのは、その内のひとつだけ。
「出し惜しみするようなことじゃねェだろ。両方とも教えろ。」
思わずローが口を挟んだが、ライラの意見は変わらない。
「出し惜しみするかどうかは、あたしが決めるわ。条件に合わないのなら、交渉はこれまでね。」
手にした薬瓶をテーブルに戻され、せっかくまとまりかけた交渉が白紙になりそうで、モモは焦った。
「え、待って……!」
どちらも重要なこと。
2つとも知りたいけど、それが無理なら片方だけでも手に入れたい。
「ロー…ッ」
最終的な決定権は、船長のローにある。
縋るような視線を向けると、彼は重いため息と共に、舌打ちをした。
「チ…ッ。わかった、それでいい。」
「交渉、成立ね。」
戻した薬瓶を再び手に取り、今度はそれを懐にしまう。
交渉は成立した。
ライラは惚れ薬を、モモたちは情報を。
「……で、どうする? どちらの情報が知りたいの?」
連絡が取れなくなった、ルフィたちの行方か。
それとも、ビブルカードが乗ったサカヅキの船の場所か。
教えてもらえるのは、ひとつだけ。
それによって、船の進路が変わる。
行き先を決められるのは、船長だけ。
ちらりとローの横顔を窺うと、彼の瞳に迷いはなく、すでにどちらか決めているようだった。
「俺が知りたい情報は…──」
この瞬間、カチリと音を立てて、運命の歯車が動き始めた。