第49章 休息
ひとしきりライラの話を聞いていたローだったが、どうにも納得できずに口を挟む。
「……お前が奇妙な能力の持ち主だってことはわかったが、それがコイツとどんな関係がある。」
まさか、同じホワイトリストの手配者だから、政府の手に渡らないよう取り計らってくれた…というわけでもないだろう。
「命懸けのボランティアだと言うのなら話は別だが…、そういう類の人間とも思えねェ。」
世の中には、呆れるほどの善人も存在する。
だが、ローの目から見て、ライラはそういう部類の人間とは違く映る。
ならば、正当な理由があるはずだ。
なにか隠す理由でもあるのでは、と疑念の眼差しを彼女に向けたが、ライラはその理由についても、いとも簡単に白状する。
「あたし、今は革命軍に所属してんの。だから、セイレーンみたいな強力な人種が、政府に渡ると困るのよね。」
「革命軍…だと? お前が……?」
「なによ、ご不満?」
この海には、海軍・海賊とは別に、革命軍という勢力が存在する。
世界中で暗躍する反政府組織。
時には戦争や反乱をおさめたり、違法薬物を取り締まりをも行う彼らの目的は、打倒世界政府。
その革命軍が、敵対する勢力である世界政府の手にセイレーンが渡ることを、快く思うはずがない。
セイレーンを得ること、それはつまり政府の力を高めることを意味する。
「あたし自身は、そんなたいそうな理念を掲げてるわけじゃないけどね。それでも、ホワイトリストの存在は、どうにかしたいと思ってる。」
海賊や犯罪者を指名手配したブラックリストとは違う。
ホワイトリストに手配されている者は、罪もない一般人。
ほんの少し、人とは違う力を授かっただけの人間だ。
「だから、あたしはあんたたちの味方…とまではいかないけど、少なくとも敵じゃない。」
「確かに…筋の通った話ではあるが……。」
けれども疑い深いローは、ライラが本当に革命軍であるか、信じきれていない様子だった。