第49章 休息
態度の大きいライラは、おそらくローとは馬が合わないだろう。
けれど、ローは筋を通す男。
自分の仲間…それも一番大切な人を助けてもらって、礼も言えない人間ではない。
「コイツを助けてくれたこと、礼を言う。……助かった。」
そんなローの様子に、ライラは片眉を上げる。
こんなふうに素直に礼を言われるとは思わなかったようだ。
「べ、別にいいわよ。この子が海軍に捕まったら、あたしたちも困るし…。それより、この人、あんたの部下なんでしょ? ちゃんと残りの金額も払ってよね!」
この人とは、床で打ちひしがれているシャチである。
ローは「ハァ」とため息を零しながら、懐から金を出し、倍額の10万ベリーをライラに渡す。
「釣りはいらん。その代わり、コイツの服は返してやってくれ。」
「いいけど。あたしもこんな趣味の悪い服、いらないし。」
ポイッと返されたのは、素材だけはやたら良い、ハートの海賊団専用ツナギ。
そういえばこのツナギって、コスチュームかなにかなのかな。
わたしもあまり…着たくはないけど。
「うぅ…、船長、スミマセン……。」
「詫びはいいから、ギャンブルを控えろ。」
「ハイ、世話のかかるクルーでスミマセン。」
大変、シャチがベポみたいになってる。
こんな落ち込みやすいキャラクターは、白クマ1匹で十分なのに。
「さて、と。あたしはそろそろ行こうかな。お小遣い、ありがとね。」
「……待て。」
さっさと退散しようとするライラを、ローが引き止めた。
「なによ。リベンジでもする?」
「俺はギャンブルはしない。それより、さっきモモが海軍に捕まると、お前たちも困ると言っていたな? お前たちとは誰のことだ。」
「あ、確かに。」
今まで全然、そのことに気がつかなかった。
ライラ個人ではなく、ライラたち。
複数いると思われる彼らは、どうしてモモが捕まると困るのだろう。
そして、そもそもライラは何者なのか。
助けてもらっておいて、モモは彼女のことをなにも知らなかった。