第49章 休息
VIPルームを出たモモとローは、再び酒場のテーブルについた。
別に情報が欲しいからではなく、単純に朝食を摂るためだ。
ジャンバール以外の仲間は、おそらく集合時間に遅れてきて、バタバタした出航になりそうな予感がするから。
ローは鮭と昆布のおにぎりと、けんちん汁。
そしてモモは、船ではめったに口にできない、クリームたっぷりのフレンチトースト。
それぞれの朝食に舌鼓を打っていると、遠くのテーブルで男の情けない呻き声が聞こえた。
「うぅ、ちくしょー!!」
その声に聞き覚えがあるような気がして、2人は目を合わせた。
「ロー、今の声って……。」
「……チッ。面倒事は起こすなと、あれほど忠告したんだがな。」
最後のおにぎりの欠片を口の中に放り込むと、ガタリと椅子を立つ。
慌ててモモもトーストを押し込み、ついていく。
目的のテーブルに近づくと、そこには野次馬ができていた。
「どけ。」
ローがひと声掛けると、彼の顔を見た野次馬たちは、恐れおののき急いで道を譲った。
5億の賞金首は、それほどの影響力がある。
しかし今は、それに感心している場合ではない。
ローの後を追い、人ごみを掻き分けて進むと、やはりというか…、モモのよく知る人物ががっくりとうなだれていた。
「シャチ…ッ! どうしたの!?」
「モモ、船長ぉ……ッ」
涙声で泣きべそをかくシャチは、なにがどうしてそうなったのか、パンツ一丁であった。
「バカが。また賭けポーカーをしたな?」
「賭けポーカー?」
賭けポーカーとは、その名のとおり、金銭を賭けたポーカーのこと。
シャチは釣りの次にカードゲームが好きで、商船やカジノに行っては、こうして賭けを楽しんでいる。
問題なのは、釣りとは違って、本人にその実力がないこと。
毎回大敗しては、身ぐるみを剥がされる事態になるのだとか。
「……やめたらいいのに。」
「そんな簡単にやめられたら、苦労はしねぇんだよぉぉ!」
これは重症だ。
とりあえず、依存症に効く薬でも処方してみようか。