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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第49章 休息




聞いた者を滅ぼす、禁忌の歌。
それが滅びの歌だ。

自我を失い、狂気に満ちたセイレーンたちの歌は、百戦錬磨の海兵の命を奪った。

「だが、話はそれだけでは終わらない。」

もし、ここで話が終わっていたのなら、まだ良かった。
哀れなセイレーンたちは、悲しき業を背負って生きていただろう。

だけど、現実は違う。

この世界に、モモの仲間はいない。

なぜなら……。

「複数のセイレーンが歌を唄ったことにより、互いの歌を聞いた彼女らは、そのまま命を落とした。」

唄い手でありながら、聞き手となったセイレーンたちは、互いの滅びの歌を聞き、その効果によって、自らも帰らぬ人となったのだ。

あまりに凄惨な過去に、言葉が出ない。

セイレーンという種族は、己の歌によって滅びた。

その事実に、モモは激しく打ちのめされる。

(だから、禁忌の歌なんだ。だから、唄ってはいけない歌なんだ。)

モモの母は、当然この話を知っていたはずだ。
この教えを、どんな気持ちで自分に伝えたのだろう。

あんなに簡単に、破っていいはずの掟ではなかったのに。

「この事実を、政府は徹底的に隠しているが、同時期に多くの海軍将校たちが“殉職”していることを見ると、間違いないだろう。」

空席となった階級を埋めるために、大きな人事異動があった。
それだけは、隠せるはずもない。


「なぜ君の母親が生き延びたのかは謎だが、族長には娘がひとりいて、その娘の遺体は発見されなかった…という噂もある。」

「族長の…、娘……。」

それが、母だったのだろうか。
そしてモモは、族長の孫にあたる存在だったのか。

わからない。
もう、誰も教えてくれない。

でも、ずっと知らなかった自分の正体。
それを僅かに知れた気がした。

それは間違いなく嬉しいこと。
そのはずなのに、モモの瞳からは涙が溢れて、止めることができなかった。



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