第49章 休息
「セイレーンの情報を…、教えてもらえますか?」
メルディアの行動に、一抹の不安を覚える。
けれど、だからといって情報を聞かないなんていう選択肢は、モモに残されていない。
どんな情報だっていい。
もしそれが、力を取り戻すきっかけになるのなら。
「わかった。ではまず、現存するセイレーンについてだが…。」
欲しかった情報に、無意識に息を飲む。
もしかしたら、この世界には自分と同じセイレーンがいる。
そんな期待に胸膨らませて。
「残念なことだが、セイレーンという種族は、6年前にウォーターセブンで確認された娘、つまり君しか生き残っていない。」
「……ッ!」
その結果は、きちんと想定しているはずだった。
しかし、いざ突きつけられてみると、ショックが計り知れない。
そんなモモの背中に、ローの手のひらがそっと触れ、代わりに質問を続けた。
「なぜ、そんなことがわかる。」
「それは我々がツークフォーゲルだからとしか言いようがない。」
ツークフォーゲルに加盟している商店は、何千何万とある。
膨大な数の商人が、世界中に散らばって集めた情報。
それこそがツークフォーゲルの強み。
「だが、まさかそれで終わりということはないだろう。なにせ、俺とモモにしか言えない情報だ。」
生き残っているのがモモだけ。
その程度の情報なら、別にそんなルールを設けなくとも問題はない。
ローの読みは正解だったようで、男は視線だけで頷いた。
「現存するセイレーンは君しかいないが、その滅亡の理由なら知っている。」
「滅亡の…、理由……。」
その理由を、深く考えたことはなかった。
珍しい能力ゆえに、それにまつわることだろうと、なんとなく考えていたけれど、きちんとした理由があるのだ。
「あまり、気持ちのいい話ではない。……それでも聞きたいか?」
「……はい。」
いつの間にか、能力を取り戻すという目的を忘れ、ただ頷いてしまっていた。