第49章 休息
セイレーンの情報を売らない。
それは、莫大な情報を取り扱うツークフォーゲルが、モモを危険に晒さないためのもの。
セイレーンの稀少さは、メルディア1番よく知っていた。
自分が設立した連合会が、決してモモの敵にならないよう、先手を打っていたのだ。
「だが、ひとつだけ例外がある。」
「例外?」
「トラファルガー・ローと金緑色の瞳をした女…モモには無償で提供すること。」
「……!」
メルディアはわかっていたのかもしれない。
モモたちがいつか、セイレーンの情報を求めてここにやってくることを。
ジーンと感動したモモだったが、ここでローが首を傾げる。
「コイツはともかく…、なぜ俺まで対象になる。」
ツークフォーゲルが設立されたのは、5年前。
その頃はまだ、ローとモモは出会っていない…はずである。
「え…、えっとぉ…、なんでだろうね。」
冷や汗を垂らしながら、強張った笑みを浮かべることしかモモにはできない。
「と、とにかく、わたしたちだったら、セイレーンの情報を教えてくれる…そういうことですよね?」
「ああ。」
「教えてください!」
やや食い気味に身を乗り出して、この危険な雰囲気から脱出した。
「では、話そう。」
「待て、情報の受け渡し方は、紙面のはずじゃなかったのか?」
「通常はそうだが…、なにせこの情報は、俺と会長しか知らんことなんでね。紙面に残したくはない。」
会長…、メルディアも知っていること。
それならばなぜ、彼女は今までモモに教えてくれなかったのだろう。
モモが他のセイレーンを気にしていたことくらい、彼女は知っていたはずだ。
無償で提供するくらいだから、営利目的とも違う。
まるで、本当はモモに知られたくなかったかのように……。