第49章 休息
「ここが、情報酒場?」
「ああ。」
ローに案内されてたどり着いた情報売買所は、一見すると普通の酒場にしか見えない。
本当にこの場所に、あらゆる情報が集まっているのか。
半信半疑で酒場の中に入ると、早朝だというのに、半分以上のテーブルが埋まり、なかなかの繁盛ぶりだった。
ローが適当な席についたので、モモもそれに倣って椅子に座る。
するとすぐにウエイターがやってきて、「ご注文は?」と尋ねてきた。
「ワンオーダー制だ、なにか頼め。……エールを。」
朝っぱらから度数の高い酒を頼むローに半ば呆れたが、酒に強い彼にとって、アルコールはただの飲み物。
モモは当たり障りなく、ホットミルクを注文した。
ほどなくして、注文したドリンクが運ばれ、ことりとテーブルに置かれたと思ったら、再び「ご注文は?」と尋ねられる。
「セイレーンの情報だ。」
ここへ来た目的を伝えると、一瞬ウエイターが固まった。
しかし、それを笑顔で誤魔化すと、「少々お待ちください」と言って去っていく。
「様子がおかしいな。」
「あ、やっぱり普通じゃないのね。」
「ああ。いつもなら、ここで注文した情報の詳細を聞いてくる。」
店に目当ての情報があれば、金額交渉の上、盗み聞きを防ぐために紙面で情報を与えられ、内容を暗記する。
それが情報酒場のルール。
しかし、今回はその流れから逸れている。
初っぱなから手間取りそうな予感だ。
「あ、誰か来たよ。」
ウエイターの代わりに現れたのは、いかにも責任者であることを匂わせる、屈強な男。
ローと一緒だから身の安全は保障されているけど、どうしよう、一悶着あるのかな。
「トラファルガー・ローだな?」
「……ああ。」
さすがは5億の首。
その存在が知れ渡っている。
素直に感心していると、男が今度はモモの方に顔を向けた。
「お前は、モモ…か?」
「えッ!」
なんでわたしまで!?
驚いてミルクに咽せた。
ゲホゴホと咳き込むモモの背を、ローが呆れたようにさする。
しかし、その視線は男から離れず、警戒の色を強めていた。