第12章 デート
「ちょっと、ロー。」
メルディアは眦を吊り上げ、なおも言い募る。
「わかってると思うけど、モモにとってはあなたが初めての男なんだからね。」
手をつなぐのも、キスをするのも、体を重ねるのも、なにもかもが初めて。
「あなた、もっとリードしなさいよね!」
ローがロクデナシなせいで、モモが女の子ならば誰もが感じる胸のトキメキを知らずに終わるなんて許せない。
「……。」
黙り込むローの腕を離し、メルディアはモモをギュッと抱きしめた。
「メル?」
「本当は傍にいて、もっといろいろ教えてあげたいわ。」
女の磨き方、男の使い方、お酒の飲み方。
いつかしたように、モモと一緒にもっと語らいたかった。
でも…。
「…行くのね?」
「ええ、あなたとの約束を果たさなければね。」
絵画は揃った。
後は多くの人々に見てもらうだけだ。
自分が出来る、最大限の方法で夢を叶えたい。
「…だから、お別れよ。」
もう、旅立つための船も用意した。
「必ず見に行くから。」
「ええ、決まったら連絡するわ。」
メルディアはモモを離すと、ポケットから小さな紙切れを差し出した。
「これ、私のビブルカードよ。あなたが持っていて。」
持ち主の居場所を教えるというビブルカード。
モモはそれを大切に受け取った。
「メルディア、わたし、あなたに会えて良かった。」
メルディアはモモの、一番大事な気持ちに気づかせてくれた。
「それはこっちのセリフよ。ありがとう、モモ。」
モモはメルディアに、もう一度夢を追う未来を与えてくれた。
2人はしっかりと手を握り、再会を誓う。