第12章 デート
「モモ、お前も欲しいものがあれば持って行けよ。」
「え…?」
ローの言葉に、モモはキョトンとした。
その発言を聞いて、目を剥いたのはメルディアだ。
(前言撤回! このロクデナシ…ッ)
すぐにローのもとへ飛んでいき、腕を強く引っ張った。
「…なんだ。」
「なんだ、じゃないわよ…ッ。あなた、まさかモモへのプレゼントを奪った財宝で済ます気…!?」
「あ…?」
声を潜めて怒るメルディアに、ローは訝しげに眉をひそめた。
「あなたがいかに適当に女と付き合ってたのかは、よくわかったわ。でもね、モモにとっては一生で初めてのプレゼントよ。もっと考えなさいよ…!」
メルディアの指摘に、ローはようやく自分の失敗を理解した。
今まで付き合っていた女に、そもそもプレゼントだなんてしたことはない。
だから、そういう発想が浮かばなかった。
ただ、仲間に山分けをするような気持ちで言ってしまったのだ。
けれどそれは、自分たちの関係上『プレゼント』になるわけで…。
モモにとっては、生まれて初めてもらう恋人からのプレゼント。
ローは今、敵から奪った財宝で済ませてしまった。
「ロー。」
しばらく財宝を見つめていたモモが振り返った。
「あ、いや…。」
珍しく狼狽するローに気がつかず、モモはありのままの気持ちを言った。
「いらないわ。」
「…あ?」
それは強がりでも不満でもなく、モモの本音。
「特に必要なものはなさそうだから、わたしは大丈夫。」
太陽の下で輝く、金銀財宝、色とりどりの宝石を前にモモは笑顔でそう言ってみせた。
(まったく、この子は…。)
ローがローならば、モモもモモだ。
モモにはまず、恋人からプレゼントを貰える、という発想がない。
ついでに、高価な装飾品が自分を引き立てるもの、という考えもない。
(もっと、こう…、乙女らしい発想はできないのかしら…ッ)
のほほんと笑うモモに、メルディアは姉にも似た感情でヤキモキした。