第49章 休息
夢中で話していたから気がつかなかったが、時計の針はとっくに22時をまわり、いつの間にか夜が更けていた。
「もうこんな時間…。そろそろ真面目に見張りをしなくちゃね。」
「必要ない。わざわざ外で見張ってなくても、船に侵入者が来ればすぐに気がつく。」
見てもいないのにどうやって? と不思議に思ったが、ローたちバケモノは感覚が鋭いので、そんなことは朝飯前なのかもしれない。
「そう。じゃあ わたし、部屋に戻って仕事の続きをしようかな。」
突然ローが呼びにきたから、中途半端な状態で放置してしまっている。
座り心地のよいソファーから腰を上げようとした時、肩に回っていた腕に力がこもる。
「……待て。次は、俺の番だろうが。」
「え?」
「次は、俺がお前に聞く番だ。勝手に行こうとするんじゃねェ。」
肩に圧力がかかって、身体がびくとも動かない。
確かに質問はモモから始まったのだから、モモで終わっては1回多い。
だけど、いつでも話はできるんだから、そんなに拘らなくてもいいと思う。
「わかった、わかったから力を緩めて。お尻がソファーに埋まっちゃうわ。」
どこにも行かないことを伝えると、腕の力は緩んだが、位置は変わらず肩に置かれたまま。
逃げないってば!
「それで…、次はなにを話そうか。」
「……。」
沈みかけた身体を起こし、姿勢を正ながら尋ねると、ローはなぜか沈黙した。
(あれ、聞きたいことがあったんじゃなかったのかな。)
単純にモモが傍を離れることが気にくわないというのもあっただろうが、順番を気にするあたり、おそらく尋ねたいことがあるはずだ。
(聞きにくいことかな?)
モモのすべてを知りたいと言っておきながら、ローはモモが本当に答えられないことに触れてこない。
例えば、昔の恋人の名前とか。
聞いてはこないけど、たぶんすごく気になっているはず。
答えられるものならそうしたい。
でも、本当に答えられないことを考えると、ローのように「なんでも聞いて」とは決して言えなかった。