第49章 休息
今日、ローの手料理を食べて、新しい一面を知った。
好きな人のことを知れるのは嬉しいし、誰よりも自分が知っていたいと思う。
その気持ちは、モモにも十分理解できる。
モモだって、ローのことをもっと知りたい。
けれど、自分は話さないくせに、それを尋ねるのはズルイ。
でも、「お互い様ね」なんて言ったところで、ローが納得しないことは目に見えている。
このままでは、あらゆる手を使って、強引に聞き出されそうだ。
ローの本気具合に危機感を覚えたモモは、なんとかいい方法がないものかと考え込む。
「……あ、そうだ。こういうのはどう?」
「なんだ。」
「順番こに話しましょう。ローが昔話をひとつしたら、わたしも話す。嘘は吐かないようにする。でも、どんな話し方をするかはわたしの自由よ。」
それならば、肝心なところをぼやかして話せる。
それに、話し方はモモの自由だから、尋問のように追求されることもない。
ついでにローのことも知ることができて、一石二鳥だ。
それなのに、ローはモモの提案を神妙な面もちで受け止める。
「俺の話なんか聞いてどうする。」
「それを言ったら、わたしの話も同じことじゃない。」
「俺の話なんざ、おもしれェことはなにもないぞ。」
「だから、わたしの話も同じだってば。…嫌なら別にいいのよ。この話はなしにしましょう。」
その代わり、もう聞かないでね…と突っぱねれば、「待て」と返事が重なる。
「わかった、それでいい。」
納得したローは、ようやくモモの手を離してくれる。
「……で、俺が先に話すんだろ? なにを話せばいい。」
「そうね。だけど先に、食器を片付けてしまおうよ。その後でゆっくり話せばいいじゃない。」
たぶん、長くなりそうな気がする。
なにを聞かれても、おかしなことを口走らないように、モモは気を引き締めなければならない。
ちょっとした気合いを入れるため、ゆっくり皿洗いをしながら心を落ち着かせた。