第49章 休息
うっかり口を滑らしたモモは、大いに焦った。
「ええっと、そのぅ……。」
こういう時、どうしたらいいのだろう。
誤魔化すか嘘を吐くか、その2択しか残されていないが、どうにも誤魔化せる気がしない。
嘘を吐くにしたって、適当な嘘を言えば、たちまち自分の首が締まる。
慎重に考えたいのに、ローはさらに質問を重ねてくる。
「お前、ウォーターセブンに行ったことがあるのか? …そういえば、商船であの街の菓子に食いついていたな。」
水水ソフトクリームをローに強請ったことが、こんなところで裏目にでた。
「あー…、そうなの。ウォーターセブン…、行ったことがあるわ。」
ここまで感づかれてしまえば、ウォーターセブンを知らない方がおかしい。
素直に白状した。
過去、モモは海賊だったと話しているのだ。
ウォーターセブンに行っていたとしても、おかしくはないはず。
「いつのことだ?」
「いつだったかなぁ…、昔のことだから忘れちゃった。」
あはは…と乾いた笑いで誤魔化してみるものの、やっぱりこれっぽっちも誤魔化されてくれない。
「そういや、お前…バジル屋とはどこで知り合った。顔見知りだったんだろう?」
なぜだ。
なぜそこでホーキンスの名前がでてくる。
まさか覚えているのだろうか、モモはローとウォーターセブンに行って、そこでホーキンスと出会ったことを。
「……昔のことは、いいじゃない。」
結局、誤魔化すことも嘘を吐くこともできずに、そっと視線を落とす。
「……俺に言えないことなのか。」
「言えないことだって…、話したくないことだってあるわ。」
むしろ、言えないことの方が多い。
あの素晴らしい月日は、モモの人生の大半を塗りつぶした色濃いものだから。
ここまで言えば、きっとローは引いてくれる。
今までも、ローがしつこく過去を尋ねてきたことはなかったから。
だから話は終わり…。
そう思って食器を片付けようと動いた。
けれど、予想外だったのは、その手をローが掴んだからだ。
「……話はまだ終わってねェ。」