第49章 休息
「……オイ、寝てるのか。」
反応が鈍いモモに焦れて、ローが再びノックする。
慌てて返事をし、ドアを開ける。
「ごめんなさい、起きているわ。」
「どうせ、あの薬を調べていて、気がつかなかったんだろ。」
失礼な。
ちゃんと気がついていたよ。
だけどもしかしたら、ローがノックをしたのは、先ほどのものが初めてじゃなかったかもしれない。
成分解析中に声を掛けられても、気がつかない自信がある。
「ええっと…、どうかしたの?」
誤魔化すように笑えば、わざとらしくため息を吐かれた。
やっぱり、何度か呼ばれていたらしい。
「メシができた。」
「え、ゴハン…?」
さっき帰ってきたばかりなのにと時計を見れば、もうあれから数時間経っていた。
窓の外からも夕日が差している。
時間の経過にも驚いたが、そんな長時間、ローが自分を放置してくれたことにも驚きだ。
こう言ったら怒られるが、ローは少しばかり寂しがり屋さんだから、あまりモモをひとりきりにしてくれない。
珍しいこともあるものだ。
「ん…、ていうか、ゴハンって言った?」
聞き違いでなければ、夕食ができたって。
そういえば、なにやら美味しそうな匂いが上から漂ってくる。
「なんだ、文句があるのか。俺のメシが食いたいと言ったのは、お前だろうが。」
「それは…、確かに言ったけど。」
でも、モモがうっかりサンジの名前を出したから、拗ねて作ってくれないと思っていた。
「食うのか食わねェのか、どっちだ。」
「食べる! 食べます!」
勢いで言ったことだったけど、ローが自分のために作ってくれたもの。
食べたくないわけがない。
そういえば、ローは商船でなにか食材を購入していたが、なるほど、このためだったのか。
(でも、どうせだったら料理を作る姿が見たかったな。)
ローのことだ、なんでも器用にこなすのだろうけど、メスではなく包丁を握る姿がイマイチ想像できない。
おたまを持って、鍋をかき混ぜる様子を思い浮かべると、なんだかキュンとする。
これがいわゆる、ギャップ萌えというやつか。
貴重な機会を逃したことが、ひたすら悔しい。
「なにしてんだ、早く来い。」
「あ、うん。」
あとで持ってくれないかな、おたま。