第49章 休息
ローのあとに続いてリビングに入ると、できたての料理から湯気が立ち、お腹を刺激する匂いが部屋中に漂う。
それほど空腹を感じていたわけではなかったのに、くぅ…とお腹が鳴った。
いつも作る側だから気がつかなかったが、匂いってこんなにも食欲を誘うものなんだ。
ちらりとキッチンに目を向ければ、湯気の立つ鍋を除いて、綺麗に片付けられている。
……さすがです。
「ほら、座れ。」
「え、いいよ。あとは並べるだけでしょう? わたしがやるわ。」
「…いいから、座ってろ。」
エスコートされるように椅子を引かれては、座らないわけにはいかない。
お姫様のような扱いに、こんなに贅沢をしてもいいのか…と内心戸惑う。
そうこうしている間に、ローは手際よく料理をよそい始めた。
レタスとベビーリーフのサラダには、カリカリに焼いたベーコンやパルメザンチーズが散らされていて、彩りも鮮やかだ。
さらには、その上に温泉玉子が乗っかるものだから、まるでおしゃれなカフェに出てくるサラダみたいで驚く。
正直、モモは料理の見栄えをそれほど気にして作っていなかったので、ただただ感心する。
サラダに目を奪われていたら、次はスープが運ばれてきた。
(あッ、おたま!)
見たかったおたま姿を逃した。
すごく悔しい。
「なんだ、嫌いなものでも入っていたか?」
「そ、そんなことない。…気にしないで。」
透き通ったチキンスープは、香りだけでしっかりダシがとれていることが窺える。
まさかとは思うが、鶏ガラからとったのだろうか。
気軽に手料理が食べたいなんて言ったけど、こんなに手の凝ったものが出てくるとは思わなかった。
もっと手軽な、それこそおにぎりと味噌汁くらいでよかったのに。
なんて、今さら言えないけど。
恐れ慄くモモをよそに、最後に出てきたのは炒飯だった。
大ぶりのエビやイカが入った海鮮炒飯。
見た目は普通だけど、具材の下処理の面倒さは、料理をする者なら誰でも知っている。
「…ありがとう、ロー。」
「あ? まだ食ってもいねェだろ。」
食べてなくても、何気ない一言でこんなにもしてくれることが、すごく嬉しかった。