第49章 休息
「勝負場…か。」
コハクは背中に下げた刀をひと撫でした。
サクヤから譲り受けた鬼丸は、未だ背の丈に釣り合わない。
「コハクも一緒に行くか? 勝負場は腕試しにうってつけッスよ。」
刀を手に入れてから、ローは時間が空くと稽古をつけてくれるようになった。
師匠としてのローはとても厳しいけれど、その分、上達するのも早い。
シャチやペンギンも気ままに相手をしてくれるが、いかんせん、実力に差がありすぎた。
実際のところ、己の実力がどの程度通用するかは、気になるところである。
(それに……。)
ちらりと視線をモモたちに向ける。
事の詳細は聞いていないが、モモとローは無事想いを寄せ合うことができたようだ。
しかし、モモが海軍に攫われたり、例の島での一件だったりと、ゆっくり語らうような時間は作れていないだろう。
それならば、コハクは“息子”として気を利かせるべきだ。
“両親”の仲は良いに越したことはない。
まあ、ローなんかはコハクがいようがいまいがお構いなしだろうけど。
「じゃあ、ちょっと行ってこようかな。」
「お、そうこなくっちゃ!」
いろんな都合があって一緒に行くことを決めたが、ペンギンは純粋に喜んでくれた。
「え…、でも、危なくないの?」
「大丈夫ッスよ、俺もついてるし。それに、コハクはモモが思うより、ずっと強い男になってるッス。」
事実、バケモノの血を引いたコハクは、大人の海賊にも劣らない実力を身につけていた。
あと数年すれば、立派に懸賞金がつくだろう。
それはペンギンにとって、なにより自慢なことだった。
コハクの成長はハートの海賊団全員の楽しみ。
彼は、モモとローだけの“息子”じゃないのだ。
「ペンギンがそう言うのなら…。でも、本当に気をつけてね?」
「わかってるよ、心配しすぎ。」
心配性な母親に肩を竦めると、コハクは今さっき登ってきたばかりのハシゴへ足をかける。
「じゃ、朝には戻ってくるから。」
それまでせいぜい、2人の時間を楽しんだらいい。
そんな思惑があるとは露とも思わないモモは、呑気にコハクとペンギンを見送った。