第49章 休息
「出発は明日の朝にする。わかっちゃいるとは思うが、くれぐれも問題を起こすんじゃねェぞ。」
「「アイアイサー!!」」
せっかくの商船なので、ローは仲間たちに自由時間を許した。
……船番のペンギンを除いて。
「あー…、俺も行きたいッス。行きたい行きたい行きたい…!」
船番は公平にジャンケンで決めている。
しかし、そのメンバーにモモとコハクは含まれていない。
戦闘力が低くては、船を守れないからだ。
「なるべく早く戻ってくるから。ね、ロー?」
「……たぶんな。」
ローと一緒なら、モモだって船番ができるし、ペンギンと交代してあげられる。
商船は広いけど、政府関係者に見つかる可能性を考えれば、長時間 出歩かない方が得策だろう。
恨めしそうにするペンギンに見送られながら、モモはローとコハクの3人で商船の中へと入った。
「らっしゃいらっしゃい! 東の海産、エレファント本マグロはどうだい!?」
「ウォーターセブン名物、水水肉はこっちだよ!」
「悪魔の能力者除け、海楼石のアクセサリーはいかがかな!?」
あちらこちらから怒号のような呼び込み声が飛び、それだけで目が回りそうだ。
「海楼石のアクセサリーだって。母さん、お守りに買えば?」
「やめておけ。敵の能力を封じたくらいで、コイツが危険を回避できるんなら苦労はしねェ。」
なんか今、失礼なことを言われた気がする。
なんなら、ロー除けに買ってもいいんだけど。
「サクラ王国産、魔女の惚れ薬! 数量限定だよ!」
いかがわしい呼び込みに足を止めると、モモの目的のひとつである薬屋を発見した。
「なに、母さん欲しいの?」
「んー…。」
惚れ薬と称するものは、たいがい偽物である。
せいぜい強めの媚薬とか。
けれど、商船はプロの商人の集まり。
決して客を騙したりしない。
それに、サクラ王国って…。
聞き覚えのある名前に、懐かしさが広がる。
モモの薬酒を褒めてくれたあの人は、元気にしているだろうか。