第49章 休息
商船とは、モモの認識では商売を生業とする貨物船だと思っていたが、どうやら違うらしい。
いくつもの船が海上で連結し、巨大なマーケットができあがる。
海上に浮かぶ巨大市場は、一般人、海軍、そして海賊であっても、分け隔てなく利用できるのだという。
「でも、そんな大きな船なら、海軍と海賊の戦闘が起きたり、それこそ海賊に襲われたりしないの?」
誰でも利用できるということは、誰とでも遭遇する可能性があるということだ。
「商船内では、どんな職業だろうと戦闘が禁止されている。違反した者は、その後、二度と商船を利用できなくなる。」
違反どころか、商船を襲うなんてもってのほか。
利用できなくなることはもちろん、手痛い報復が待っている。
「この海に、一時の利益と航海の命綱を天秤にかけるようなバカはいない。」
長い航海において、物資の補給こそが最大のポイント。
食料、水、薬、どれもなくては生きていけない。
自給自足でまかなえるものは、たかがしれている。
だから海軍も、目の前に海賊がいるとわかっていても、捕縛ができない。
「そういう意味では、商船の中は1番の無法地帯だな。」
「安全なんだか、危険なんだか、わからないところね…。」
いや、わかっている。
そういうところこそ、1番危険なんだ。
戦闘にならないといっても、それは商船の中だけの話で、ひとたび出航してしまえば、安全な場所など幻と消える。
「でも、どうやって商船の場所を知るの?」
海の上で店を開くということは、場所など決まっていないのだろう。
島でもないから、エターナルポースもありはしない。
「商船が出店したら、合図として赤い狼煙が上がる。それが目印だ。」
遠くからも目立ち、消えにくい特殊な狼煙を目印に、様々な船が商船を目指してやってくる。
「出会えるかどうかは、運しだいだがな。」
「じゃあ、よく見ておかないとね。」
そう言って、窓の外を眺める。
すると……。
「あれ? ねえ、ロー…。あれって……。」
窓から見える景色。
果てしなく続く海平線の先には、一筋の赤い煙。
商船が出店した合図だ。