第49章 休息
実際のところ、ローは料理がそこそこ上手い。
幼少期、コラソンと一緒に白鉛病を治すために旅をした。
彼に料理をさせるわけにいかず、必然的に料理の腕が上がった。
なにせコラソンは、焚き火を起こせば服を燃やし、なにもないところで転ぶ天性のドジっ子だったのだ。
そういう意味ではモモもドジっ子だが、もしかして自分はそういう人間に弱いのでは…と今さらながらに気づく。
とにかく、モモの1番は常に自分でありたい。
自分でも度が過ぎた独占欲だとは理解しているが、こればかりはどうしようもない。
特に、彼女の中で料理の上手い男の認識が、あの女好きな男であることがどうしても許せない。
ここでモモの希望通り、手料理を振る舞うのは簡単なことだ。
しかし、それではサンジを超えることはできない。
小細工なしでプロに勝てると思うほど、自惚れてはいないからだ。
さて、それではどうしたらいいか。
「……商船に寄りてェな。」
「商船?」
皿洗いを終えたローが突然呟くので、モモはきょとんと首を傾げた。
「ああ。食材を仕入れたい。」
「食材って…、さっきのこと、まだ気にしてるの?」
迂闊にサンジの名前を出したがために、ローにいらない闘志を燃やさせてしまったことを、ちょっとだけ後悔している。
「うるせェ、俺はやると言ったら必ずやる。」
「……そう。」
そんなつもりで言ったんじゃないけれど、こうなってしまったローは、絶対に引かないことを長い付き合いの中で知っている。
そこはもう諦めるとして、モモは違う疑問をぶつけてみる。
「商船に寄るって、どういう意味なの?」
食材が欲しいことはわかったが、まさか、船を襲おうとでもいうのか。
海賊らしいといえばそうだけど、そんなことをしてほしくはない。
モモの戸惑いを感じとったのだろう、ローは「そうじゃねェよ」と首を横に振る。
「商船ってのは、海の上で商売する船のことだ。」