第49章 休息
食べすぎた。
みんながポイポイくれるから、調子に乗ってしまった。
それでも、みんなの満足した顔を見られただけで、モモは幸せな気分だった。
何気ない日常が最高の幸せ。
それを初めて認識したのは、6年前、別れを選んだ瞬間だった。
そして、みんなと生きる道を選んだ今、再認識している。
たった6年の間に、自分の進む道は大きく変わりすぎた。
その奇跡のような選択に、モモはただ感動するしかない。
「……どうした。」
皿洗いの最中に、物思いに耽りすぎた。
隣で布巾片手に皿を拭いていたローが、怪訝そうに尋ねる。
「ううん、なにも。」
こうしてまた、一緒に皿洗いができるなんて、夢にも思わなかった…なんて言えない。
なんでもないフリをして手を動かすが、ローは納得できないようで、じぃっと見つめてくる。
これはなにか言わないと、しつこく食い下がってくるやつだ。
「ん…、そのー…、ローの料理も食べてみたいなって、思っていただけ。」
「俺の料理?」
「うん、そう。」
つい口から出た言葉だったが、嘘じゃない。
ローの料理。
「だって、上手なんでしょう?」
遠い昔、言っていた。
恩人コラソンと旅をしていた頃は、ずっと自分が作っていた。
だから、料理は上手いんだって。
いつか食べさせてくれる。
そんな約束は、永遠に果たされないものだと思っていたけれど。
「……誰から聞いた?」
「えっと…。」
そうくるか。
意外とレアな情報だったのだろうか。
「ベポ…かな?」
ベポたちとは10年来の付き合いだって言うし、ローもベポになら作ってあげそうな気がする。
「チッ、アイツめ。」
よかった、セーフだ。
「どうして? 知られたくないことなの?」
「そういうわけじゃねェが、お前ほどは上手く作れない。」
「え、ありがとう。でも男の人の料理って、そういうものなんじゃないの? ほら、サンジが特別なだけで。」
モモとしては、男の料理は大ざっぱな方が味がでる…と言いたかったのだが。
「……俺と黒足屋を比べたな?」
「え……。」
いや、サンジはコックだからって話で。
「黒足屋より、うまいメシを作る。絶対だ。」
「そういう意味じゃ…──」
「絶対だ!」
ローの料理を食べられる日は、来る…のか?