第49章 休息
船をまるっと綺麗にして、クルーの薄汚れた身体もまるっと綺麗した頃、朝食兼昼食も完成していた。
「うわぁ、なにこのいい匂い!」
毛の脂を落として、もふもふになったベポが、部屋に入るなり感嘆の声を上げた。
こういう反応、久しぶりだな。
つい昨日まで行動を共にしていた某海賊を思い出して、モモは苦笑する。
彼らはよく言えばクール、悪く言えば無反応で、モモがどんな食事を作っても、こんなに感激することはなかった。
しかし、それは限られた食材の中でしか料理できなかったからで、もし次に機会があったなら、眉のひとつでも動かしてやりたいと闘志を燃やす。
「ねえ、ねえ! お昼ゴハン、なに!?」
そんなに無邪気な笑顔を見せられたら、こちらとしても作りがいがあるというものだ。
「海獣の唐揚げと、根菜の煮物。それから、けんちん汁と焼おにぎりね。」
和食で攻めてみたが、焼おにぎりと言った瞬間、ローがぴくりと反応したのをモモは見逃さなかった。
なんだかんだ言っても、自分はローの胃袋を掴んでいると思う。
カロリーがどうの、肉を何百グラムと騒いでいたくせに、いざ作ってみるとなんの口も出してこない。
「メシだ、メシだ!」
「やっとモモのメシが食える!」
ばたばたと椅子に座る仲間たちと一緒に、モモも食卓につく。
「「いただきまーす!」」
言うやいなや、戦争のような食事が始まる。
あちらこちらから箸が飛んできて、熾烈なおかず争いが勃発するのだ。
おかわり、あるんだけどね。
(……本当に帰ってこれたんだ。)
当たり前だと思っていた日々に戻ってこられた喜びを、そっと噛みしめる。
その光景をのほほんと眺めていたら、モモの皿に唐揚げが飛んできた。
「なにをぼんやりしてる、肉を食え。」
「食べてるよ。」
心配しなくても、モモの皿にはたくさんの唐揚げが…って、あれ? 増えた。
「モモ、おれのもあげるよ。」
「あ、ありがとう…。」
笑顔を返しつつ ひとつ食べる。
「あ、じゃあ俺も。」
「俺も!」
「…俺のもやろう。」
「母さん、オレのも。」
うん、だから。
おかわり、あるんだけどね…。