第49章 休息
ようやくリビングの掃除が終わり、キッチンが機能を取り戻したのは、昼過ぎのことだった。
朝食を摂り損ねてしまったが、理由が理由だけに仕方ない。
しかし、ローはそれがひどく気にくわないようで、集めたゴミを片付けながら文句を言っている。
「モモ、朝メシの分も食えよ。」
「はいはい。」
おざなりに返事をすると、やたら本気で怒られた。
「太れと言ったことを、忘れたんじゃねェだろうな。」
「忘れてないけど、わたしの胃は常識的な量しか入らないの。」
暴飲暴食は胃が荒れる原因のひとつだ。
栄養の過剰摂取だって、身体によくない。
食事は体づくりの基本だとは言うけれど、みんなのように自分の体積と同じ量を食べるなんて、ぜったいに無理。
たぶん、身体の構造が違うんだと思う。
あんなに恐ろしいほどカロリーを摂取しておいて、スマートな体型を維持していられる理由を、それ以外に見つけられない。
「普通に生活していれば、体型なんてすぐ戻るわよ。」
その脂肪がついてほしいところについてくれないのが、悩みの種ではあるが。
「みんなと違って、そんなに運動もしないんだから。」
ハートの海賊団では、力仕事は男の役目。
モモが身体を動かすことといえば、家事と菜園の世話くらいなものだ。
心配性なローを安心させるべく そう言えば、彼は心外だ…とばかりに言い返す。
「は? なにを言ってる。身体なら、動かすだろうが。」
「そりゃあ動かすけど、みんなほどじゃ──」
「今夜は、寝かすつもりはない。」
……はい?
寝かすつもりって、えっと…。
「毎度毎度、抱き潰さないようにするのが苦労する。お前にもう少し体力があれば、手加減する必要もねェんだが。」
………。
あれ、この人、なんの話をしてる?
「今のお前は、抱いたら折れちまいそうで怖ェ。……壊れるくらい抱いてみたいとも思うがな。」
「──ッ」
一拍遅れて、顔が燃えるように熱くなる。
昼間っから、なにを言って……!
ていうか、抱き潰すって、壊れるくらいって、なんだ。
怖い、怖すぎる。
赤くなったり青くなったりするモモを見て、ローは満足げに笑った。
「くく…、さっきの仕返しだ。」
仕返しって、なんの!?
「まあ、嘘は吐いてねェけどな。」
だから、怖いってば!