第49章 休息
早朝に起こされたベポ・シャチ・ペンギンの3人は、欠伸をしながらリビングへと入ってきた。
しかし、その誰もが、ローの機嫌の悪さを理解したとたん、欠伸を引っ込めて顔色を悪くする。
ちなみに、唯一掃除に協力的だったジャンバールは、見張り番のためここにはいない。
「キャ、キャプテン、どうかしたの?」
ビクビクとした口調で、ベポが不機嫌の理由を尋ねる。
「どうした、だと?」
じろりと睨まれ、大きな白クマは「ひッ」と身を縮ませた。
「俺の船は、いつからゴミ船になった。それともなにか? 得体の知れない細菌でも繁殖させようとしてるのか。」
そこまで言えば、どんなに察しの悪い人間でも、怒りの理由がわかるだろう。
ローの言うとおり、キッチンのおぞましい汚れの中には、いろいろとイケナイ生物が繁殖していそうだ。
神聖なるキッチンをあんな状態にされ、今回ばかりはモモも、みんなの味方をできそうにない。
「違うんスよ、船長。これはちゃんと…、片付けるつもりで…。」
しどろもどろに言い訳するペンギンに、シャチも首がもげそうなくらい首を縦に振る。
「そのとおり! ほんとに片付けようと…、今日ッ、やるつもりだったよな!」
「なあ?」とベポに同意を求めれば、「アイアイ!」とこちらも激しく頷いた。
「……今日? なるほどな。」
怒り引っ込めたように腕を組んだローを見て、3人はひと安心する。
が、しかし。
「だったら今日中に、船を磨き上げろ。塵ひとつ残すんじゃねェぞ!」
「「……ッ!」」
やっぱり怒ってる!
それも、塵ひとつ残さずなんて無茶な。
ただでさえ、掃除なんて苦手な分野なのに!
ぷるぷると涙目で震えても、今日のローは機嫌が悪い。
「さっさとやれ!」とばかりにアゴでしゃくる。
そうなれば、頼みの綱はモモだけ。
男2人とクマ1匹に縋るような視線を向けられ、モモは息をのんだ。
「甘やかすな。」
ローに釘を刺されたけど、残念だがモモに3人を突き放すような厳しさはない。
「……一緒に頑張ろう?」
早朝のキッチンには、ローの舌打ちと、3人の鼻をすする音が響いた。